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バルチックがこれまでで最もアヴァンギャルドな新作をリリースした。

ステンレススティールとチタンをミックスしたケースに4色展開の大胆な文字盤デザイン、レザーストラップとメッシュブレスレットのオプションが加わったバルチック プリズミックを紹介しよう。これは間違いなくバルチックのなかで特に驚くべきデザインのひとつであり、かなり意見が分かれるとは思うが、手頃な価格ながら多くのことが行われているのは事実だ。

先に述べたように、この時計のケースはサテン仕上げとポリッシュ仕上げのラグ、ベゼル、(シースルー)ケースバックのエッジから成る5つのパーツで構成され、すべてSS製である。ケースの残りの部分はグレイン仕上げされたグレード5チタン製で、30mの防水性を確保している。ドーム型サファイア風防を採用し、ベゼルの縁はポリッシュ仕上げとサテン仕上げの表面が混在。シースルーバックをとおして、手巻きのプゾー 7001ムーブメントを鑑賞でき、同ムーブメントの厚さはわずか2.5mmと、手頃な価格とスリムさを実現した。なおパワーリザーブは約42時間だ。

この薄さにより、全体の厚さは9.2mmしかない(風防を除いた場合は7.4mm。時計が手首にどのようにフィットするかおわかりいただけるだろうか)。ストラップは990ユーロ(日本円で約16万円)のイタリア製カーフレザーストラップ、あるいは1050ユーロ(日本円で約17万円)のクイックリリース付きメッシュブレスレットの2タイプから選べる。

いつものことだが、ショーの主役は文字盤だ。中央部分は外側のトラックと同様、ギヨシェモチーフで仕上げられ、インデックスを囲む中央部分は円形のサテン仕上げとなっている。スモールセコンドの文字盤は粒状の質感で、それをサテン仕上げのSS製リングで縁取っている。またサテン&ポリッシュ仕上げの面取りが施されたドーフィン針もポイントだ。インデックスも洗練されており、ミッドセンチュリーの“カクテルウォッチ”らしい雰囲気を醸し出している。文字盤はパープル、グリーン、サーモン、アイスブルーグレーの4色から選べる。

バルチック プリズミックは、今後10日間(米国東部時間2月25日 午前10時まで)の予約注文を受け付けており、最初の注文分の納品は2024年7月に行われる予定。以降の注文は、2024年10月から順次届けられる。

昨年末、これをちらっとプレビューで見たときは本当に驚いた。文字盤のワイルドなテクスチャーの組み合わせと大胆なインデックスは、バルチックの過去のリリースと比べるとかなり常識を逸脱しているように思う。ブランドのこれまでのリリースというと、私はどちらかといえば実用的かつ手頃な価格のものを連想しがちだ(MR-01のドレスウォッチを持っているにもかかわらず)。彼らのプレス用写真も、ピンク・フロイドの『狂気(原題:Dark Side of the Moon)』みたいな、プリズム的な雰囲気だった。ただの壁のレンガ(Brick In The Wall)ではないと言ってもいい…ごめん、アルバムを間違えた。しかし手頃な価格の時計が、往々にして当たり障りのない美的感覚に傾きがちなこの世界で、本作は大きなサプライズだった。

デザインから価値まで、明白にすべきことがたくさんある。正直なところ、パッケージがどのようにまとまるのかよくわからず、もう少し時間をかけてデザインを見てみたかった。バルチックは親切にも今日の発表に先立って各文字盤の試作サンプルを実際に撮影できるように、生産前の時計を用意してくれた。裏蓋のネジの間隔など、変更点はいくつかあるが、前提条件はすべて実機で再現されている。バルチックのリリースはいつも価格の割にはしっかりしている感じがするため、彼らが実験したくなる気持ちは理解できる。さまざまな仕上げ技術を駆使して、人々をあっと驚かせるような時計を作ってみてはどうだろう? 確かに、このデザインはとてもおもしろいアイデアだが、突然出てくるものではない。

この時計には1950年代からのヒントがたくさん詰まっている。パテック Ref.2549(および2550)の“ディスコボランテ”に似た形状のラグと、ここでの比較としてより適切なのは、ミックス仕上げの文字盤に植字インデックスを採用した時計である。大胆なピラミッドインデックス、ギヨシェ、サテン加工された表面とセクターセコンドというデザインの組み合わせ例は、控えめに言ってもかなりのものだ。最初は気に入るかどうかわからなかったが、何度も見るうちに好きになってきた。その時計は確かにこれらの色のほうがうまくいくだろう。ブルーグレーはほかの時計と並べて見たときにとても落ち着いた感じがして(問題なく使える) 、パープルは私には大胆すぎた(好みによるかもしれない)。ただグリーンは完璧なバランスが取れていて、メッシュブレスレットとの相性もよく、サーモンダイヤルもクラシックな雰囲気を醸し出している。2549を愛する私としては、バルチックがもっと大胆なパッケージになるような形状のケースを全面的に採用してくれたらうれしかったのだが、エントリーレベルの時計としては確かに理にかなっているとも思う。

さて、どうしようもない理由から私はブレスレットマニアなのだが、この時計の最高の特徴のひとつであるSS製メッシュブレスレットが含まれていることについて話そう。これは現代のリリースではかなり珍しく、ミッドセンチュリー的な雰囲気が再び強調されている。このブレスレットは2023年に発表されたバルチックのOnly Watchエディション(パープル文字盤が印象的であった)で見たことある人もいるかもしれない。また、オメガのノータイム・トゥ・ダイ・シーマスターブレスレットもほうふつとさせる。シーマスターをNATOからメッシュにアップグレードする場合、バルチック プリズミックだけではそれ以上のコストがかかることだろう。

このメッシュは、テンションクラスプからとおして閉じることで、所定の位置に固定される(残念ながら、ノータイム・トゥ・ダイにあるようなデプロワイヤントバックルはない)。ほかのメッシュブレスレットでは、手首の内側を圧迫する余分な“テール”に不満を持つ人を聞いたことがあるが、このモデルはそんなことは起きない。薄いケースと非常に快適なストラップのおかげで、時計は私の手首にピッタリとフィットし、身につけるのが楽しくなった。この値段でこのクオリティは新鮮だ。イタリアンレザーのストラップも悪くないし、メッシュがちょっと派手な人にはいい選択だろう。ただしバルチックであれブラックベイ 58であれ、私はいつもブレスレットから始め、あとで必要に応じて交換することを皆にすすめている。

スペック上気に入る箇所はたくさんあるが、これをコレクションに加えるかどうかはまだ決めていない。私のコレクションにどのように収まるか、想像するのは難しいし、デザインを変更したいと思う点もいくつかある。そして、それは公平な判断だ。すべてのブランドがすべての時計を、私の好みに合わせてつくってくれるわけではないし、それはそれでいい。もしかしたら私は真に理解していないのかもしれない。ただパテックのRef.2549R-1という、唯一公に知られているモデルを私にくれる人がいたら、すぐにそれに飛びつくだろう。しかしほかの好みに関係なく、本当の問題はそれが実際にどう機能するかということだ。もちろん気に入った点はたくさんあるが(熱心なファンからしたら何の問題もないだろう)、今後改良される可能性のある点をいくつか挙げてみよう。

先ほど言ったように、新しいプリズミックのダイヤルバリエーションのなかには、ほかのものよりもうまく機能するものがある。しかしこの価格面で競争力を証明しているブランドは、ほかにもいくつかある。特にクリエイティブなデザインと高価値の仕上げを、手頃な価格で提供することに関してだ。プリズミックでは、SSとチタンをミックスすることでケース素材と仕上げのミックスによる理論的な付加価値を提供している。確かに手首につけても遠くから見ても、ちょうどよく見える。しかしもう少し近づいてみると、ケースにあまりにも多くのことが起きすぎて、そのどれもが目立っていないことがわかった。文字盤も同様で、中央のトラックが文字盤のより興味深い仕上げを妨げている。何度も繰り返している同じ例で比較すると、パテックは文字盤にふたつの異なる仕上げをミックスさせただけだった。少ないほうがいいのかもしれない。さらに、プゾー 7001は実用的なムーブメントであるが、組み立て途中という印象にも受け取れるため、シースルーバックは少し不必要だったかもしれない。そうは言っても、これが非常に手頃な価格のリリースであることを忘れてはならない。

現在、バルチックの時計をいくつか所有しているが、MR01、エルメティック、アクアスカーフ、トリコンパックスといったラインは彼らの得意分野であり、素晴らしい表現をしていると思う。しかし多様性は人生のスパイスだと言われているように、今はほかのブランドがやっているような、ヴィンテージウォッチの既成概念にとらわれないテイストを製造する姿勢を間違いなく高く評価している。この時計と過ごした数日のあいだに私はこの時計にすっかり魅了された。その魅力はわかるし、ここで示した創造性を鵜吞みにはできない。どちらかと言えば、これはほかのブランドがより手頃な価格で、インセンティブのあるアイデアを市場に出すためのトリガーとなるだろう。我々には確かに必要なものなのだ。

基本情報
ブランド: バルチック(Baltic)
モデル名: プリズミック(Prismic)

直径: 36mm
厚さ: 9.2mm
ケース素材: 316Lスティールおよびグレード5チタン
文字盤: グリーン、サーモン、パープル、ブルーグレーのギヨシェモチーフ。サテン仕上げの外装セクター、サテン仕上げのSSセルクラージュと粒状のセンターセコンドダイヤル。サテン仕上げのドーフィン針にポリッシュ仕上げの面取り
インデックス: アプライド(ポリッシュ仕上げ)
夜光: なし
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ラグ幅20mのイタリア製カーフレザーストラップまたはSS製メッシュブレスレット

ムーブメント情報
キャリバー: ETA プゾー 7001
機能: 時・分・センターセコンド
パワーリザーブ: 約42時間
巻き上げ方式: 手巻き
追加情報: ダイヤモンドポリッシュの面取り、ブリッジにコート・ド・ジュネーブ装飾、ラチェットとリューズホイールにソレイユ加工、青焼きビス、地板とテンプのビーディング仕上げ

価格 & 発売時期
価格: イタリア製カーフレザーストラップが990ユーロ(日本円で約16万円)、クイックリリース付きメッシュブレスレットが1050ユーロ(日本円で約17万円)
発売時期: 予約注文は2月15日午後4時(UTC+1)から2月25日午後4時(UTC+1)まで。最初のオーダーの納品は2024年7月から、次のオーダーの納品は2024年10月以降

古くなった時計の文字盤は素晴らしい投資になるか、

1993年、デイトナ 6239の“ポール・ニューマン”はアンティコルムオークションで9257ドル(当時の相場で約103万円)、2013年にはクリスティーズで7万5000ドル(当時の相場で約732万円)で落札されたが、その後も価格は上昇し続けている。今年は新しい時計(中古でも新品でも)にとって厳しい年になるかもしれないが、最も望ましいヴィンテージモデル、特にオリジナルかつコンディションが良好なモデルは、どう考えても優良株であり、投資のチャンスである。しかし非常に収集性の高い時計の価値の大部分、あるいはその大半を占める“文字盤”は、永久に使用されると想定して作られておらず、所有者が生きているあいだに見分けがつかないほど劣化する可能性がある。

時計の文字盤やダイヤルマーカーのエイジングは、褐色化(“トロピカル”文字盤)や、クラック(“スパイダー”文字盤)、および時計の価値を劇的に高めると考えられるそのほかの経年変化など、ほぼ無限ともいえる多様な形態がある。このような経年変化は、素人目には単に最盛期を過ぎた時計のサインのように見えるかもしれないが、熱心な愛好家やコレクターにとって、適切に経年変化した文字盤(これが重要だ)は、現代のコレクターが高く評価する、ある種の誠実さと真正性の表れなのである。

それにもかかわらず、目に見えて古くなった文字盤にプレミアムがつくべき考え方は、かなり新しいようだ。おそらく、特定のパーツはそのままにしておきたいという要望を受けたブランドのサービスセンターの対応ほど、このことを明確に示すものはない。というのも、コレクターはしばしばブランドのサービスセンターに時計を預ける際、オリジナル(またはオリジナルと推定される)文字盤を残してもらうのに苦労するのだ。一方で、外観が著しく損なわれている(そしてたまに機能的に問題もある)文字盤に対するサービスセンターの対応は、多くの消費者が避けたいと望んでいた時代に生まれたサービスポリシーによって、裁量が左右されることが多い。ひどく色あせた塗装、黄色に変色したラッカー、もはや光らなくなった夜光マーカーを持つ文字盤は、単に耐用年数を過ぎているとみなされるのだ。さらにサービスセンターは、時計の保存をビジネスとしていたわけでなく(一般的には今もそうだ)、彼らの任務は時計を機能的にも外見的にもできるだけ新しい状態にして、顧客に返却することだったのだ。

今日では古くなった文字盤は、コレクターのあいだで本物の証として、また時計の歴史の目に見える関係として捉えられている。ダイヤルのパティーナと我々の関係は複雑なのだ。アートにも同じような難問がある。美術品を修復するとき、できるだけ新品の状態に戻すべきか、それとも劣化が進行しないようにするだけでいいのかという問題だ。意見が分かれる典型的な例として、レオナルド・ダ・ヴィンチの最も有名な油彩画のひとつ『聖アンナと聖母子』の修復を挙げよう。2011年にルーブル美術館で絵画の修復が行われたのだが、その変化は劇的だった。この絵画で多く見られた柔らかなブラウン、アンバー、バーントシェンナ(土の焼けたような色)の色調は、修復家の綿棒によるクリーニングで消え、代わりに何世紀にもわたって蓄積された汚れと、表面の酸化の下に潜んでいた、誰もが想像していないほどの鮮やかな青、赤、肌の色調が姿を現した。この変化に対する抗議の声は、愛する時計を勝手に変更されたときに抱く、多くのコレクターの怒りとよく似ている。ただそれは単なるセンチメンタルな感情ではない。現在の市場において、オリジナルの文字盤を新品に置き換えることは、時計の価値を根底から覆すことになりかねないのだ。

『聖アンナと聖母子』(出典: Wikipedia)。

しかし、芸術作品と同じように、文字盤は時間の経過とともにゆっくりと、しかし確実に変化する素材でできている。時計の文字盤について驚くべきことのひとつは、もともと時計の文字盤をつくるために使われていた材料が、どれだけ化学的に安定しているのか、信頼できる情報が実際にはほとんどないということだ。一般的に塗料やラッカーの平均寿命は限られている。時計の文字盤は、酸化、熱、紫外線、湿気などの影響をゆっくりと、そして取り返しのつかない、ほぼ再現不可能な影響を受ける。ポール・ニューマン デイトナが1万ドル(当時の相場で約108万円)以下の時計だった時代であれば大した問題ではなかったかもしれないが、今日では何十万ドル、あるいは何百万ドルもの大金が、その絶妙な文字盤の美観にかかっており、また文字盤の状態が永遠に続くことを考えていない時計では、この問題は心配の種となるのだ。夜光塗料は遅かれ早かれ文字盤から剥離するし、“トロピカル”と呼ばれるダイヤルは今後も色あせ、変色し、予測不能な変貌を遂げる可能性が非常に高い。そして現在の状態が将来も維持されるという、ほとんど暗黙の前提で購入した超高額時計の文字盤が、今後数十年のあいだにどうなるかは誰にも断言できないのだ。

過去10年間、ヴィンテージウォッチはいい投資だったのだろうか? 少なくともいくつか例では、ほとんどの投資手段で聞いたことのない収益率を持った素晴らしい投資であった。しかし近い将来、最悪の状況を迎えるかもしれない。ヴィンテージウォッチ市場の軟化と、市場に流通するであろう膨大な数の偽物、そして多くの時計に見られる取り返しのつかない物理的劣化とが相まって、ヴィンテージウォッチ収集は非常に危険な航海になる可能性があるのだ。

ブルガリ オクト フィニッシモは2012年の登場以来、デザインのアイコンとして活躍している。

過去12年間に数多くの限定モデルがリリースされたが(知っているものもあれば、驚くようなものもあるかもしれない)、間違いなく最高のもののひとつは、2022年に、コレクション10周年を記念してリリースされた“スケッチ”だろう。

ブルガリはみんながスケッチを気に入ったことを知っているし、同じくメゾンのお気に入りのひとつとなった。だからこそ、ブルガリオルロジュリーのプロダクト・クリエーション・エグゼクティブ・ディレクター、ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ(Fabrizio Buonamassa Stigliani)氏が、メゾンの創業140周年を記念して、オクト フィニッシモ オートマティックとクロノグラフGMTのために再度鉛筆と木炭を取り出し、新しい“スケッチ”ダイヤルをデザインした。今回は、時計を裏返さなくともムーブメントを見ることができるようなスケッチだ。スペックは既存モデルと同じのため、このふたつの時計に関する以前の記事(前回の“スケッチ”LEなど)で確認してほしい。新作では、40mm径の18Kローズゴールドまたはスティールケースのオートマティックと、43mm径SSケースのクロノグラフ GMTが用意されている。

私は昨年半ばに、ブルガリが時計製造を行う本社を訪れたのだが、そのときオリジナルのクロノグラフ GMT スケッチを貸してくれた。そしてすぐに私のお気に入りの時計になった。彼らは、手描きのデザインを模倣するために正確なテクスチャーと奥行きを得て製造するのがとても難しいと説明してくれた。そして今、彼らは再びそれを成し遂げた。新しいオートマティックが、よりシンプルで洗練されたオリジナルの“スケッチ”ほど好きかどうかはまだわからないが、私はボナマッサ・スティリアーニ氏の大ファンなので、彼の審美眼と創造的な世界観がますます好きになった。私が完全に理解したときには、きっと手遅れになっているだろう。

Octo Finissimo
ボナマッサ・スティリアーニ氏は、オクト フィニッシモのオリジナルダイヤルデザインを再現するのではなく、シースルーバックを見ているかのように、荒削りながらもムーブメントを視覚的に美しい形で描いた。また文字盤や石など、さまざまなパーツを説明したテキストも追加されており、H.モーザーの“エンデバー・パーペチュアルカレンダー チュートリアル”をほうふつさせるものとなっている。クロノグラフ GMTの画像はまだ共有されていないが、文字盤デザインは3つのモデルのなかでも一番お気に入りで、もしかしたらオリジナルスケッチを抑えて新しい一番になるかもしれない。

Chronograph GMT
オートマティックはSS製が世界限定280本で250万8000円、RG製が世界限定70本で723万8000円(ともに税込)で販売。シースルーバックには“EDIZIONE LIMITATA”と“1884 – 2024”の文字もプリントされている。なおSS製クロノグラフ GMTは世界限定140本で、価格は2万800ユーロ(日本円で約336万3000円)だ。

ティソはここ数年、PRXからシデラルまで、ヘリテージにインスパイアされた手頃な価格の時計を発表している。

60年代のオリジナルモデルよりも大振りながら、ヴィンテージクロノグラフを忠実にアップデートしており、こちらは30万円以下で購入できる。

ティソは60年代にPRコレクションを発表した。PRコレクションはミッドセンチュリー期のマーケティング用語で、“より頑丈”を意味する。1968年には、PRコレクションに最初のクロノグラフを追加し、この新しいPR516はそれを参考にしている。その数年前に発売されたデイトナやカレラのように、PRをレースに適したモデルにすることが狙いだった。オリジナルのPRクロノグラフは、ミッドセンチュリー期の純然たるクロノグラフが持つシンプルさと、70年代のファンキーなデザインのあいだにうまく収まっている。ケースはずっしりと分厚いが、サイズは36mmと小振りで、鮮やかな色もいくつか配されているが、完全なディスコスタイルではない。

PR516 クロノグラフ メカニカルはこの外観を一新し、ケースサイズを41mm、厚さを13.7mm(ラグからラグまで49mm)へと変更した。その厚さの約1.5mmはボックス型のサファイア風防によるものだ。直径とラグからラグまでの長さは均整のとれた時計になっているが、ケースは厚みがあり、特にミドルケースは平坦で曲線がない。手首につけてみると、チューダーのブラックベイ クロノをほうふつとさせるが、ほんの少しサイズが小さい。特に手巻きムーブメントであることを考慮すると、PR516があと数ミリ薄くなっていれば、ほかの競合製品とは一線を画していたと思う。

ただ実際に使ってみると、PR516は非常によくできている。41mm(もし5年前に登場していたら、これは42mm…あるいは44mmだったかもしれない)、ノンデイトで、目を引くほどの存在感を放つルックスを持ち、そして伝統にインスパイアされたデザインだ。

写真を見てわかるように、PR516は上から見ると均整が取れているが、横から見ると厚みが目立つ。しかし、分厚いクロノグラフはティソ特有の問題ではない。2倍、3倍、あるいは4倍以上の価格のブランドの製品を見てみると、同じような大きさのものをよく見かける。

PR516のサファイア製シースルーバックのなかには、Cal.A05.291が収められている。これはバルジュー7753をベースにしたクロノグラフムーブメントであり、そこから基本的な自動巻き機構を取り除いて、2万8800振動/時、約68時間パワーリザーブを発揮する手巻きクロノグラフとして動作させた。なお価格帯では当然といえば当然だが、ムーブメントはインダストリアルな仕上がりをしている。

ティソは文字盤とベゼルの仕上げにこだわった。マットブラックの文字盤には、オレンジ色のクロノグラフ秒針と、30分積算計インダイヤルに淡いブルーとレッドというポップなアクセントを施している。またインダイヤルには、コントラストを際立たせるためにシルバーの同心円リングを採用。針とインデックスはスーパールミノバでコーティングし、ベゼルのスケール部分にもちょっとした遊び心を加えている。

この文字盤について唯一の批判は12時位置のサインだ。これはPRXコレクションについて言及したことと似ている。(1)ティソ以外には何の意味もないため“1853”を廃止して欲しく、(2)このようなヘリテージにインスパイアされたモデルには、古いスタイルのフォントやPRクロノのような時計で見られるブロックTのロゴも見てみたい、ということだ。文字盤にはすでに遊び心のあるヴィンテージの雰囲気を漂わせているが、それに合わせたロゴ加工があれば最高にいい。

ケースはサテン仕上げのほか、傾斜したポリッシュ仕上げの面取りが施されている。ブレスレットのフィット感と仕上げも、27万3900円(税込)の時計としては見事なものだ。ブレスレットも同様に、エッジはポリッシュ仕上げで、フォールディングクラスプに向かって20mmから18mmへとテーパーがつけられ、3段階のマイクロアジャスト機構が備わっている(使用には工具が必要)。ブレスレットはクイックリリース式のため、工具なしで取り外してストラップの交換ができる。この価格で工具不要のマイクロアジャスト調整ができるブランドがほかにもあると考えると、もう少しクラスプがアップグレードされていてもよかったと思うが、ブレスレットの頑丈さと快適さには感動した。

スペックシートから、この時計が私の16cmの手首に合うとは思っていなかった。しかし、ラグからラグまでが49mmのため、比較的コンパクトにつけられ、手首からはみ出すこともない。数日間着用したが、まさに日常使いできるクロノグラフであった。厚みはあるがまったく邪魔にならないし、どこかチャンキーな雰囲気は、スペックアップされているとはいえ、ファンキーな70年代への扉を開くきっかけとなったオリジナルのPRクロノにどこか忠実な感じがする。

価格は27万3900円で、30万円以下の機械式クロノグラフという真の競争相手はあまりいないだろう。ハミルトンのイントラマティック クロノグラフ H ブレスレットは32万3400円、ティソ PRX オートマティック クロノグラフは28万7100円、昨年セイコーが新たにリリースしたスピードタイマー メカニカルクロノグラフは35万2000円(すべて税込)だ。また、ファーラン・マリの新しい機械式クロノグラフは2750スイスフラン(日本円で約46万9000円)である。

しかし、伝統にインスパイアされた機械式クロノグラフが欲しいなら、ティソ PR516は独自の道を確立している。前述したように、その意図も手首に巻いたときの感触も、ブラックベイ クロノを想起させる。でも正直、PR516のほうがおもしろいと感じるのだ。はっきり言って両者は競合しないが(PR516は3分の1の価格だ)、これはティソがヘリテージウォッチでどれだけ進歩したかを物語っている。同じような時計を3倍の値段で買うことに疑問を感じてしまう。

もちろん、完璧ではない。30万円以下の時計がそうであるように(あるいはどんな価格でもそうかもしれないが)、妥協は必要だ。いずれにしてもPR516は新たに市場に加わった手堅い製品である。機械式クロノグラフのPRXではなく、愛好家と一般の消費者層の両方を魅了する時計ではないだろうが、それで十分だ。同じ場所に雷が落ちることはないが、最近のティソはコンスタントに成功を収めており、なんだかうれしい気持ちになる。

ティソ PR516 クロノグラフ メカニカル。直径41mm、厚さ13.7mm、ラグからラグまで49mm。100m防水。フォールディングクラスプ付きステンレススティールブレスレット。手巻きCal.A05.291搭載、時・分・秒表示、クロノグラフ。約68時間パワーリザーブ、2万8800振動/時。27万3900円(税込)

オメガとスウォッチがムーンスウォッチの新しいバリエーションを発表!

“溶岩(Lava)”から“北極の光(Polar Lights)”、そしてその狭間に位置する“砂漠(Desert)”まで。これらは今まででもっともクリエイティブなムーンスウォッチのリリースかもしれない。

このふたつのブランドは本日、3本の新作を発表した。満月にインスピレーションを受けた絶妙なバリエーションや、スヌーピーにインスパイアされた2本のリリースとは異なり、これらは地球に着想を得た非常にクリエイティブなものとなっている。

上の写真は“ミッション・オン・アース – ポーラーライツ(Polar Lights)”と呼ばれるモデルで、ケースと針はターコイズブルー(いや…、かなりグリーンがかったターコイズブルー)、文字盤にはアベンチュリンガラスの文字盤からインスピレーションを得たシルバーの小さな薄片の“星”が散りばめられている。また、“ミッション・オン・アース – デザート(Desert)”はサンドカラーで、文字盤とストラップは世界の地表の5分の1を占める砂漠にインスパイアされたグレージュ(トープ)を選択している。

最後に、地球上にあるおよそ1670の活火山から流れ出る高温の溶岩(もちろん、高温の火山灰やガスも)にインスパイアされた“ミッション・オン・アース – ラヴァ(Lava)”。この時計のさらにクールな点は、オレンジ色の秒針を備えたスピードマスター“ウルトラマン”へのオマージュである。3つのサブダイヤルの数字、およびインデックスは、オメガのアラスカIIおよびプロジェクトIIIのスピードマスターと同じように放射状に配置されている。

これら3つとも、6月15日(土)にスウォッチの“厳選された”店舗(実際にどのように店舗が選ばれているかは不明)で4万700円(税込)で販売される。

信じられないことに、ムーンスウォッチの発売からもう2年が経とうとしている。そしてそれだけの時を経たのち、直近のリリースでスウォッチはゆっくりと地球に戻ってきている。

登場したばかりのムーンスウォッチは、太陽系の主要な天体(私たちの太陽系を含む)のほとんどをカバーしていた。それが熱狂の幕開けとなり、時計はかつて私たちが見たことのないような形で広く世の中に浸透していった。その後、スヌーピーの魅力をフルに引き出した“ミッション・トゥ・ムーンフェイズ”が登場して、私も初めてムーンウォッチを手にすることになった。しかし今回発表されたのは、私たちが故郷と呼ぶ宇宙に浮かぶ大きな星をより深く見つめることに特化した、ムーンウォッチ初のモデルである。ときどきムーンウォッチ疲れとでも呼ぶべきものに悩まされることがあるが、“アベレージ・ジョー(ここでは時計愛好家ではない普通の人々の意)”を時計の世界に引き込んだ彼らのパワーは認めるべきだし、私でさえこれらの新しい時計はかなりクールだと言わざるを得ない。

写真からの判断になるが、新作の“ポーラーライツ”は、アベンチュリン風のキラキラした文字盤で私のお気に入りになるだろう。“ラヴァ”のインスピレーション源がスピーディの“ウルトラマン”であることについては、オメガも素直に認めている。このふたつのブランドは、オリジナルのスピードマスターが有するコレクター心をくすぐる難解な情熱をよく理解しているのだ。サンドカラーモデルの“デザート”は、今回の3モデルのなかではもっとも落ち着いた印象で、“ミッション・トゥ・サターン”や“ミッション・トゥ・ジュピター”を彷彿とさせる(この2モデルは、いずれもオーソドックスなカラーで人気を博している)。

基本情報
ブランド: オメガ × スウォッチ(Omega x Swatch)
モデル名: ムーンスウォッチ ミッション・オン・アース ラヴァ、ポーラーライツ、デザート(MoonSwatch Mission On Earth Lava, Polar Lights, and Desert)

直径 42mm
厚さ: 13.25mm
ケース素材: オレンジ、ターコイズ、サンドカラーのバイオセラミック
文字盤色: ブラック、極小のシルバーがきらめくダークブルー、トープ
夜光: あり、インデックスと針
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ベルクロストラップ

ムーブメント情報
キャリバー: クォーツクロノグラフムーブメント
機能: 時・分・秒表示、クロノグラフ

価格 & 発売時期
価格: 4万700円(税込)
発売時期: 6月15日(土)、一部のスウォッチストアにて

優れた時計と同じように手触りの良いパワフルなフォルムに純粋な機能を備えています。

ほぼすべてのアイコンのステータスは、その遺産の上に築かれています。クロノグラフ1は911をデザインしたフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェによって設計デザインされたものです。文字盤は911のダッシュボードのメーターから着想を得ており、時間を伝えるだけでなく、最速のラップから日々のラリーまでの時間を測定するのに役立ちます。

ブラックアウトというコンセプトはほかのブランドでも試みられたものですが、ポルシェデザイン クロノグラフ1はフォルム、機能、視認性の高さを融合させた先駆者でした。ほかの真のアイコンと同様、このモデルも時代の最先端を行くものであったため、発表と同時に賛否両論が巻き起こりましたが、今日クロノグラフ1は不朽の名作として語り継がれています。そこでHODINKEEとポルシェデザインがコラボレーションし、350本限定のトリビュートモデル、

コラボレーションのためにHODINKEEらしいタッチをほんの少し加えただけで、新しいクロノグラフ1はよく見慣れたものになっていると思います。実際あまり紹介する必要もないと思いますが、簡単に見ていきましょう。

1972年、クロノグラフ1がF.A.ポルシェによって設計されたとき、それは実用的なツールであり、物議を醸すような時計ではありませんでした。当初この時計は選ばれた従業員だけが着用する時計として作られたのです。しかし、すぐに噂が広まり、ポルシェ愛好家たちが自分のものとして欲しがるようになりました。やがてこの時計は一般に向けて発売され、インスピレーションの源となった911と同様にポルシェ正規販売店で販売されました。その後、クロノグラフ1は幾度かのモデルチェンジを経験し、ポルシェデザイン50周年を記念して2022年にオリジナルに忠実なオマージュとして復刻されています。

F.A.ポルシェの仕様にほぼ忠実でありながら、現代向けにアップデートされています。スイスのゾロトゥルンにあるポルシェの時計工場で設計、開発、製造されました。その際にF.A.ポルシェが現代のリリースに向けてどのような改良を加えただろうかと想像を巡らせました。その答えは? 改良の余地はほとんど無いという結論に達しました。アイコンを改良するのは難しいのです。

オリジナルのクロノグラフ1のデザインをリフレインしながら、ケースは直径40.8mm、厚さ14.15mmに。それとマッチするように装着されたブレスレットは、耐久性に優れた超軽量チタニウム製で、マットブラックのチタンカーバイドコーティングが施されています。ヴィンテージ911の雰囲気をより現代的な仕様で再現しようとするポルシェ愛好家の最近のバックデート志向のように、クロノグラフ1 HODINKEEモデルのスーパールミノバ®は、文字盤のインデックスの方が針よりもやや濃い、レトロ風の色合いを帯びています。この微妙な調整により、オリジナルの文字盤の経年変化に慣れ親しんだヴィンテージ・クロノグラフ1の愛好家にとって、この新しい時計はより親しみやすいものとなっています。

ダイヤルにはオールドスクールなポルシェデザインのロゴとフォントが使用され、アメリカ市場への敬意を表して「1 Mile」グラフィックが再現されています。6時位置の「H」は、文字盤上で唯一ホディンキーにちなんだもので、軍用モデル「3H」に使用された1972年のポルシェデザイン・レッドで表現されています。

日本のポルシェデザインとHODINKEEファンコミュニティへのオマージュでもあります。そのため、3時位置のデイ&デイト表示は英語と日本語に対応しています。クリックとリューズを数回回転させるだけで、どちらの言語で表示されるかを選ぶことができます。

ダイヤルデザインは、上部に30分積算計、下部に12時間積算計、9時位置にランニングセコンドを配した、アイコニックな6-9-12サブダイヤルレイアウトを継承しました。しかし今、そのボンネットの下には、超高精度のポルシェデザイン・キャリバーWERK 01.140が搭載されています。このムーブメントは、歴史的なポルシェデザインのロゴ、レタリング、限定ナンバーを示すチタン製のクローズドケースバックの裏で安全に収納されています。また、HODINKEEの名前とアイコン、「2024」という年、そして「TRILOGY – CHAPTER 1」という刻印が施されています。

初代911や1972年のポルシェデザインの黎明期のように、HODINKEEの新しいクロノグラフ1限定モデルは、物語の始まりに過ぎません。しかし、この新しいクロノグラフ1がアイコンになるかどうかを決めるのは、時計自体ではなく、それを身につける人々と彼らがそれを使って行うことなのです。

シーファラーは、海、砂浜、そして太陽の情景を思い起こさせる時計です。

モダンなカレラでありながら、私たちが特に愛するヴィンテージホイヤーのデザイン哲学をしっかりと受け継いだ1本です。このコラボレーションでは、1968年のカラーリングとベゼルデザインをそのままに、タグ・ホイヤーの現代的な魅力が見事に融合されています。

1940年代後半から、ホイヤーはレーサー、パイロット、冒険家、そしてアウトドア愛好者のためにツールウォッチ、つまり特定の目的に特化したクロノグラフを製造することを使命としていました。これらの時計の一部は、アバクロンビー&フィッチを含む小売パートナー向けにホワイトラベルで提供されていました。約1世紀前、アバクロンビー&フィッチは自らを「世界一のスポーツ用品店」と謳い、テディ・ルーズベルト、アメリア・イアハート、アーネスト・ヘミングウェイといった著名なアウトドア愛好家たちを装備で支えていました。ニューヨークにある巨大な旗艦店には、かつて若き日のジャック・ホイヤーが担当していた時計部門があり、1940年代初頭、ホイヤーはこのニューヨークの小売店向けに、防水ケースに収められた高級なスリーレジスタークロノグラフの製造を開始しました。それはまさに冒険にふさわしい時計だったのです。

1947年か1948年頃、アバクロンビー&フィッチからホイヤーに対して、ジョン・オールデン・ナイトのソルナー理論を活用した時計デザイン依頼がありました。この理論は、太陽と月の位置に基づいて、魚や獲物が最も活動的になる時期を予測することができます。また、月が潮汐を支配しているように、この概念は海での潮の満ち引きの時期を予測するのにも役立ちます。ナイトは毎年、狩猟や釣りに最も適した日や時間を示す一連のチャートを発表していました。

当時のアバクロンビー&フィッチの社長であったウォルター・ヘインズは、この理論を活用したタイドインジケーターを備えた時計のデザインに関する特許を取得し、シャルル・エドゥアール・ホイヤーに手紙を書き、この新しいデザインの製造を依頼しました。

ジャックの高校時代の物理教師の助けを借りて、ホイヤーは情報を正確に記録する複雑機構を開発することができました。それは、29.5日の月の周期のちょうど2倍の期間である59日ごとにゆっくりと回転する文字盤を備えたものでした。

タイドインジケーターは、4時位置に追加されたプッシャーを簡単に操作することで、地元の潮汐表に合わせて更新することができました。最初のモデルは、控えめなクリーム色の文字盤と、6時位置に配置されたテクニカラーの太陽の文字盤を備え、これが日中に回転して満潮と干潮の時期を示すものでした。こうして、ソルナーが誕生します。

この新機能は予想通り、非常にニッチなものでした。しかし、発売後すぐに、ホイヤーが開発したデザインと技術は、アバクロンビーの依頼により、3つのレジスターを持つクロノグラフ機能と組み合わされました。通常9時位置にあるはずのランニングセコンドレジスターの代わりに、ホイヤーはソルナーのタイドダイヤルを搭載。クロノグラフと組み合わせることで、3時位置には青と白のレガッタタイマーが追加され、より多くの水上冒険に対応することができました。このタイドクロノグラフはアバクロンビー&フィッチによってシーファラーという名前で販売され、ホイヤーのマルチパーパスクロノグラフの新時代が幕を開けたのです。

約10年間、シーファラーの基本的な美学は大きく変わらずに保たれていました。しかし、ホイヤーのヴィンテージカタログのなかで、このブランドの変遷を最もよく示している時計はシーファラーかもしれません。他のアイコニックなモデルとは異なり、シーファラーは専用のケースが与えられることはありませんでした。次の20年間で、文字盤の色、ベゼル、ケースの形状やサイズが変化し、1960年代の終わりにはよりモダンでスポーティなスタイルにシフトしていきました。

1968年、ホイヤーはオリジナルシーファラーの最終バージョンを製作。頑丈なオータヴィアのコンプレッサーケースを採用したシーファラーRef. 2446Cは、100mの防水性能を持ち、これまで以上に海にふさわしい時計となりました。文字盤はダークアンスラサイトグレーで覆われ、回転式の分ベゼルが追加され、タイミング機能がさらに強化されました。タイドインジケーターは、日中の満潮と干潮の時間を視覚的に示す二色の青色を採用。シーファラー Ref. 2446C は、シーファラーの最後のバージョンとなり、それが今日まで続いています。

過去と現在のタグ・ホイヤーの魅力すべて
タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ シーファラー × Hodinkeeは、私たちのお気に入りであるシーファラーのリファレンスを現代的で頑丈かつ魅力的に再解釈したモデルです。シーファラーには専用のケースが存在しなかったため、この限定版をオータヴィアスタイルのケースではなく、42mmのカレラ グラスボックスケースに収めました。このドーム型サファイアクリスタル風防は、ヴィンテージのプレキシガラスのプロファイルを再現しつつ、耐久性と透明度が大幅に向上しており、水上での使用において重要な要素となっています。

オリジナルのカラースキームに忠実に、ブラックオパーリンの文字盤には、レガッタとタイドサブダイヤルにスカイブルーとロイヤルブルーの色合いがアクセントとして加えられています。カレラはベゼルがないケースであるため、オリジナルの美学を保つために、ブラックオパーリンの見返し内にベゼルを移動させました。

よく見ると、シーフェアラーのロゴは6時位置のサブレジスターに移され、後期のリファレンスの特徴的なブロック体からインスピレーションを得たカレラのフォントが使用されています。後期のシーファラーRef.2446Cのフィーリングはそのままに、未来に目を向けるタグ・ホイヤーの精神を尊重し12時位置に現在のタグ・ホイヤーとカレラのロゴを配しました。そして、現行のカレラモデルから日付窓が取り除かれたことにお気づきでしょう。

最後に、この時計にはブラックのテクスチャード・ラバーストラップが装着されており、海上での使用にも適しています。この時計は、まさにタグ・ホイヤーの過去と現在のすべてを体現しているのです。

ダイヤル
オリジナルのホイヤー シーファラー Ref.2446Cにインスパイアされたこのコラボレーションは、1968年のオリジナルのカラースキームとベゼルスケールを現代風にアップデートして維持しています。時計にはブラックオパーリンの文字盤が採用されており、内側の見返しには60秒スケールがあります。3つのサブレジスターはスカイブルー、シルバー、ホワイトの見事な組み合わせが特徴で、これはヴィンテージ後期のシーファラーを彷彿とさせます。9時位置にはタイドダイヤル、30分のヨットタイマーダイヤル(ヨットレースの5分間隔で分割)とランニングセコンドのサブダイヤルが配置されています。

グラスボックスコンセプトの未来志向を反映し、12時位置には現代のタグ・ホイヤーとカレラのロゴが施されています。オリジナルへのオマージュとして、6時位置には新たにデザインされたシーファラーのロゴが。文字盤は、昼間は白く、夜間は緑に光るスーパールミノバを施した磨き上げられたスティール製インデックスと針で強調されています。

ケース
タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ シーファラー × Hodinkeeは、繊細なサテン仕上げが施されたステンレススティール製の42mmのカレラ グラスボックスケースに収められています。ラグ幅は22mm、ラグからラグまでの長さは48.6mm、厚さは14.4mmです。クロノグラフのプッシャーはケースの右側に配置され、新たに「TIDE」プッシャーが左側に設けられています。

すべての時計は100mの防水性を確保するために、水中での耐圧テストが実施されています。ケースバックには、このコラボレーションを記念して「TAG Heuer x Hodinkee」の刻印と、限定版の個別番号XXX/968が施されています。

ブランド10番目の“基本発明”にあたるナノ・フドロワイアントEWTを発表した。

この時計は圧巻の仕上がりだ。同ブランドの発明や功績を称えるインヴェンション ピースシリーズにはトゥールビヨンが頻繁に採用されており、この時計にも同機構の姿が見られる。ダブルトゥールビヨン 30°から始まった軌跡の集大成として登場したこのモデルは、驚くほど着用しやすいモノプッシャー式クロノグラフ(フライバック式で、同社初のクロノグラフとなる)に初のフライングトゥールビヨンを搭載しているが、注目すべき点はそれだけではない。

タンタル製ベゼルとスケルトンケースバックを備えた直径37.9mm×厚さ10.49mmのホワイトゴールド(WG)製ケースを使用したこのモデルには、2万1600振動/時で駆動するトゥールビヨンケージに基づき6分の1秒単位の表示を行う常時作動のフドロワイアント秒針(または“ライトニング秒針”とも呼ばれる)も搭載されている。この機構は垂直方向を保ちながら60秒で1周するトゥールビヨンに直結する。トゥールビヨンの振幅を直接伝えることで通常のフドロワイアント輪列の余計な部品を省き、ムーブメントの小型化(直径31mm)と部品数の削減(合計428パーツ)に成功している。

厚さはわずか10.49mmしかない。

もちろん限界もある。たとえばクロノグラフ作動時のパワーリザーブは、24時間しかない(クロノグラフ非作動時の総パワーリザーブは公表されていない)。そしてもうひとつ挙げると、この非常に高価な46万5000スイスフラン(日本円で約8200万円)のナノ・フドロワイアントEWTは冗談抜きで11本しか製造されないことだ。しかしすべてのモデルに、コレクターのあいだで長年定評があるグルーベル・フォルセイならではの手仕上げが施されている。

金額や入手困難な点を気にしないなら、このモデルは今年発売された時計のなかで私が手に入れたい時計のトップ3に入る。銀行強盗をして信じられない金額を手に入れたかのような興奮で汗をかきつつ、存在しない上限額のクレジットカードを差し出したくなる最初の時計になるかもしれない(いや、実際にこの時計を手に入れるために襲うべき場所は銀行ではないだろうが)。

値段のことはちょっと脇に置いておこう。ビンス・マクマホン(Vince McMahon)氏のネットミーム(アメリカのプロレス団体WWEのCEOであるビンス氏が、興奮や驚きを次第に強めていく様子を切り取った一連の画像。彼が徐々に驚き、最後には大興奮で椅子からのけぞるようなリアクションを見せる)を見たことはあるだろうか? 同僚にこの時計のことを説明した際、まさにそのミームのような反応をされた。大きさがたった37.9mm? それだけでも注目に値する。厚さがわずか10.49mmだって? 気に入った。モノプッシャークロノグラフ? なんとしても欲しい。さらにフライングトゥールビヨンと、トゥールビヨンケージに直接取り付けられたフドロワイアント秒針? もう何の話をしているのかわからない! これはまさに驚異的だ。

先に述べたとおり、サイズだけでもこの時計は特筆に値する。厚みはわずか10.49mmだが、ラグの位置や形状、長さのために手首につけると少し浮いたような感じがする。タンタル製の外周リングにサファイアクリスタルを備えたケースバックが背面に立体感を与え、さらにタンタル製ベゼルとドーム型風防もフォルムに奥行きを加えている。直径はややモダンな印象だが、手首で少し高く見える点はパテックのRef.5004(厚さ12.8mm)を彷彿とさせる。ただ、どちらも毎日つけていたいくらい素晴らしい。

ベン・クライマーにこの時計について話したところ、これは時計愛好家、特にグルーベル・フォルセイのターゲット層が10年以上前なら熱狂したであろう時計だと彼は言った。私見だが、ここ数年でグルーベル・フォルセイへの注目はやや薄れているように感じる。今取り上げているのは約54万ドル相当の時計なので、顧客数が非常に限られているのは事実だが、この価格帯の時計を買う人は意外といる。それでも過去2年間にわたり、高級時計コレクターの集会のために世界中を飛び回ってきたなかで、実際に手首にグルーベル・フォルセイをつけている人を目にしたのは2回だけだった。そしてそのどちらも、今月初めにシンガポールで開催されたIAMWATCHでの出来事だった。いったいこの会場で何が起こっていたのだろうか?

グルーベル・フォルセイはここ数年、購買者が各々のPRによって耳目を集める有名ブランドに流れていくなかでブランドとしてのアイデンティティを見失いかけていた。同ブランドは急速に製造数を拡大し、2021年の年間130本から翌年には2022年には260本に倍増した。また(短期間であったようだが)よりシンプルなモデルを投入してより広範な層への参入を試みたが、そうした製品でさえ驚くほど複雑な構造を持ち、価格は数千万円に達していた。さらにグルーベル・フォルセイには、異なるふたつのデザイン言語が存在する。

コンヴェクスラインはより現代的な購買者を引き付けるかもしれないが、リシャール・ミルと競合することになる。リシャール・ミルは(品質や時計製造技術は別として)同じ価格帯で同様のニーズを満たし、年間5600本以上の生産量により比較的入手しやすいブランドとなっている(とはいえ入手が容易なわけではないが)。しかしこの時計はまさに今のグルーベル・フォルセイに必要なものであり、そしてあらゆる面で圧倒的な存在感を放っている。

稲妻のようなスピードで動く針をぜひ見て欲しい。

グルーベル・フォルセイの“ナノメカニクス”や“ナノジュールス単位”でのエネルギー管理については、今回は深く触れないでおこう。その真偽を確かめるには情報が足りず、単なるマーケティング用語となっている可能性もあるからだ。理解を深めるには、スティーブン・フォルセイ(Stephen Forsey)氏にフォローアップで話を聞く価値があるかもしれない(実現するかどうかは今後わかるだろう)。

しかし2万1600振動/時のテンプによって直接駆動され、1秒を6分割して動くフドロワイアント秒針(私が好む複雑機構のひとつだ)という点だけでも、これは驚異的な成果だ。グルーベル・フォルセイによれば、従来のフドロワイアントは1回のジャンプで30μJ(マイクロジュール)を消費するが、ナノ・フドロワイアントは1回のジャンプで16nJ(ナノジュール)しか消費せず、圧倒的な効率化を実現しているという。

グルーベル・フォルセイらしいデザインで、クロノグラフのコラムホイールからフロスト加工、鏡面研磨、面取りに至るまで、ナノ・フドロワイアントEWTに搭載されたムーブメントの各パーツは完璧に仕上げられている。最初はブリッジの配置やサイズがクロノグラフに期待される歯車やレバーの存在感を損ねていると思ったが、時間が経つにつれてそのシンプルさが美しいことに気づいた。

おそらくこれはグルーベル・フォルセイがこれまでに手がけたなかで最も複雑なモデルだが、ファンを熱狂させるような時計はこれにとどまらず今後も登場し続けるだろう。この時計の値段は驚くべきものだが、今年見たなかで最もクールかつ印象的な時計であり、手に入れられるのは選ばれし11人だけだ。

グルーベル・フォルセイ ナノ・フドロワイアントEWT。直径37.9mm、厚さ10.49mmのWG製ケース、タンタル製のベゼルとケースバックリング。30m防水。ゴールド製の多層ダイヤル、ロジウムカラー、エングレービングが施されたブラックラッカー仕上げの時表示リングと分表示サークル、トゥールビヨンが覗く開口部、ゴールドのスモールセコンドとクロノグラフミニッツカウンター、ポリッシュ仕上げの面取り。フロスト仕上げのフドロワイアント、秒単位の目盛りとブラックラッカー仕上げ。時・分表示、ワンミニットフライングトゥールビヨンと連動するライトニング秒針、モノプッシャークロノグラフ。2万1600振動/時で動作する手巻きムーブメントのクロノグラフ作動時のパワーリザーブは24時間。動物素材不使用の手縫いストラップ。WG製ピンバックル、手彫りのGFロゴ入り。価格46万5000スイスフラン(記事掲載時約54万ドル/日本円で約8200万円)。限定11本。

フェンディの厚底スニーカー「フェンディ マッチ」が新登場。

「フェンディ マッチ」プレイフルな新作スニーカー
フェンディスーパーコピー マッチ」プラットフォームスニーカー 207,900円
「フェンディ マッチ」プラットフォームスニーカー 207,900円
「フェンディ マッチ」新作スニーカーは、2021年に発売されたオリジナルモデルをベースに、5cmのプラットフォームソールと小さめの「FF」ロゴ、そして取り外し可能なチャームを加えてアレンジを加えた厚底スニーカー。ホワイトやピンク、ミントグリーンといったクリーミーなカラーとポップなディテールによる、プレイフルな表情が魅力だ。

「フェンディ マッチ」プラットフォームスニーカー 207,900円
「フェンディ マッチ」プラットフォームスニーカー 207,900円
「フェンディ マッチ」に付属するミニチャームは、ふんわりとしたポンポンを配して人形のように仕上げたチャームと、「ペカン」ストライプタグ付きチャームの2種。アッパーのカラーと連動したマルチカラーのシューレースに取り付けて、大胆なアクセントをプラスすることができる。
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【詳細】
「フェンディ マッチ」プラットフォームスニーカー
発売日:2025年7月17日(木)
展開店舗:フェンディ直営店、フェンディ公式オンラインストア
価格:207,900円

【問い合わせ先】
フェンディ ジャパン
TEL:0120-001-829

今回の新作UR-150は時計としての革新性ももちろんすごいが。

新作UR-150を説明するには、“よりワイドなレトログラード表示”と表現するのが適しているかもしれない。ウルベルクの特徴であるサテライトディスプレイは通常120°の弧を描くが、このモデルでは240°に広がっている。では、これは何を意味するのか? まず、サテライトディスプレイ全般の仕組みを解説しよう。サテライトディスプレイは時計回りに進むが、時間が経過してもディスク自体が回転するわけではない。赤いフレームの先端には矢印が付いており、文字盤外周にあるミニッツトラックを指して時間を示す。そして分針が60分に近づくと、フレーム全体が勢いよく0に戻り、ディスクが進んで次の時間をフレーム内に表示する仕組みだ。

秒表示がないため、分目盛りを広く配置することで視認性が向上している(これはムーブメント自体の精度ではなく、読み取りの精度の話だ)。つまり、分表示がより読み取りやすくなっているのだ。時間の設定は12時位置のリューズで行うのだが、その操作は非常に触覚的な体験だ。リューズを操作するとムーブメント全体がゼロに戻るスナップを実際に感じ取れる。通常、12時位置にリューズを配置するのは扱いづらいものだが、リューズは大振りなサイズで操作性のバランスがよく、なおかつ邪魔にならない位置に収まっている点が秀逸だ。

この新作での主な功績は、新しいムーブメントが文字盤上の表示範囲を広げたこと自体ではなく、その実現方法にある。ここはウルベルクのフェリックス・バウムガルトナー(Felix Baumgartner)氏に説明を任せよう。

「すべてのサテライトを駆動し、時針を誘導し、各要素が正確なタイミングでジャンプするようにするために、新しいサテライトコンプリケーションシステムを設計しました。このシステムは、サテライトとベースムーブメントのあいだに配置されたフライングホイールとピニオンを中心に構築されています。これがカムの“ガイディングスレッド(動きを導く指針)”を読み取り、追従します。そのため従来のマルタ十字に基づく装置を、カムとラック(土台)システムに置き換えました。この新しい設計には非常に特殊なバネの開発が必要で、その製造は自社工房で独自に加工する必要がありました。この動きの躍動感をより視覚的に楽しめるようにするため、通常の60から0の目盛り間の距離を2倍に拡大しています」と、彼は語る。

より興味深いのは、視認性の向上が主目的ではなく、ムーブメントの技術的な成果を強調するという意図の副次的な効果だったという点だ。これらの動作はわずか100分の1秒と、一瞬で完了する。これについてサソリの一撃のようだとブランドは表現している。そしてカルーセルアームに取り付けられたウェイトは、これまでで最大のサイズを誇るだけでなく、このスナップ動作の力をバランスよく制御するために不可欠な要素となっている。

同ムーブメントは自動巻きだが、巻き上げの速度や使用時に発生する衝撃、さらにはムーブメントが動作する際の力を抑えるため、ブランドは二重のタービンシステムを採用している。そしてこのタービンが、衝撃を吸収する仕組みだ。とはいえ何よりも印象的だったのは、ムーブメントの裏側の見た目だ。文字盤側からも多くのメカニズムが見えるが、裏側から見えるローターのデザインはこれまで見たどの時計とも違う独特なものだった。

この時計は有機的なドーム型形状と横から見たときのプロファイルが特徴で、手首にフィットして快適に着用できる。ケースはサンドブラスト仕上げとショットブラスト仕上げが施されたチタンおよびスティールで構成され、ふたつの異なるモデルがそれぞれ異なるカラーで仕上げられている。どちらのモデルも50本の限定生産である。

昨年、シンガポールで両モデルを目にする機会があったが、撮影したのは下に掲載した“ダーク”モデルのみだ。このモデルはアンスラサイトカラーのPVD処理が施されたケースと赤いフレームの分針が特徴である。光の当たり具合によって、ダークのブラックアウトされたケースが少しグレーがかった印象を与えることもあるが、PVD加工のない“タイタン”モデルは、基本的にこのグレーの色味となっている。

下の写真だけ見ると時計があまり手首にフィットしていないように見えるかもしれないが、それはウルベルクが非常に長めのラバーストラップを標準で提供しているからだろう。おそらく、9インチ(約22cm)の手首サイズでも、箱から出したまま特に問題なく装着できるのではないだろうか。写真を撮っていないときに、ストラップを調整して7.25インチ(約18.4cm)の自分の手首にしっかりフィットさせてみたところ、ぴったりと手首に沿った。実際、これまで着用したウルベルクのなかで最も快適だったかもしれない。

新作UR-150 “スコーピオン”の価格は、PVD加工のない“タイタン”モデルが8万8000スイスフラン(日本円で約1500万円)、先述した“ダーク”モデルが8万9000スイスフラン(日本円で約1530万円)となっている。決してお得とは言えない価格だが、ウルベルクへの愛着とブラックアウトされたデザインへの偏愛を考えると、この時計がウルベルクらしい非常にクールな一品であることは間違いない。