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ブルガリ オクト フィニッシモは2012年の登場以来、デザインのアイコンとして活躍している。

過去12年間に数多くの限定モデルがリリースされたが(知っているものもあれば、驚くようなものもあるかもしれない)、間違いなく最高のもののひとつは、2022年に、コレクション10周年を記念してリリースされた“スケッチ”だろう。

ブルガリはみんながスケッチを気に入ったことを知っているし、同じくメゾンのお気に入りのひとつとなった。だからこそ、ブルガリオルロジュリーのプロダクト・クリエーション・エグゼクティブ・ディレクター、ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ(Fabrizio Buonamassa Stigliani)氏が、メゾンの創業140周年を記念して、オクト フィニッシモ オートマティックとクロノグラフGMTのために再度鉛筆と木炭を取り出し、新しい“スケッチ”ダイヤルをデザインした。今回は、時計を裏返さなくともムーブメントを見ることができるようなスケッチだ。スペックは既存モデルと同じのため、このふたつの時計に関する以前の記事(前回の“スケッチ”LEなど)で確認してほしい。新作では、40mm径の18Kローズゴールドまたはスティールケースのオートマティックと、43mm径SSケースのクロノグラフ GMTが用意されている。

私は昨年半ばに、ブルガリが時計製造を行う本社を訪れたのだが、そのときオリジナルのクロノグラフ GMT スケッチを貸してくれた。そしてすぐに私のお気に入りの時計になった。彼らは、手描きのデザインを模倣するために正確なテクスチャーと奥行きを得て製造するのがとても難しいと説明してくれた。そして今、彼らは再びそれを成し遂げた。新しいオートマティックが、よりシンプルで洗練されたオリジナルの“スケッチ”ほど好きかどうかはまだわからないが、私はボナマッサ・スティリアーニ氏の大ファンなので、彼の審美眼と創造的な世界観がますます好きになった。私が完全に理解したときには、きっと手遅れになっているだろう。

Octo Finissimo
ボナマッサ・スティリアーニ氏は、オクト フィニッシモのオリジナルダイヤルデザインを再現するのではなく、シースルーバックを見ているかのように、荒削りながらもムーブメントを視覚的に美しい形で描いた。また文字盤や石など、さまざまなパーツを説明したテキストも追加されており、H.モーザーの“エンデバー・パーペチュアルカレンダー チュートリアル”をほうふつさせるものとなっている。クロノグラフ GMTの画像はまだ共有されていないが、文字盤デザインは3つのモデルのなかでも一番お気に入りで、もしかしたらオリジナルスケッチを抑えて新しい一番になるかもしれない。

Chronograph GMT
オートマティックはSS製が世界限定280本で250万8000円、RG製が世界限定70本で723万8000円(ともに税込)で販売。シースルーバックには“EDIZIONE LIMITATA”と“1884 – 2024”の文字もプリントされている。なおSS製クロノグラフ GMTは世界限定140本で、価格は2万800ユーロ(日本円で約336万3000円)だ。

ティソはここ数年、PRXからシデラルまで、ヘリテージにインスパイアされた手頃な価格の時計を発表している。

60年代のオリジナルモデルよりも大振りながら、ヴィンテージクロノグラフを忠実にアップデートしており、こちらは30万円以下で購入できる。

ティソは60年代にPRコレクションを発表した。PRコレクションはミッドセンチュリー期のマーケティング用語で、“より頑丈”を意味する。1968年には、PRコレクションに最初のクロノグラフを追加し、この新しいPR516はそれを参考にしている。その数年前に発売されたデイトナやカレラのように、PRをレースに適したモデルにすることが狙いだった。オリジナルのPRクロノグラフは、ミッドセンチュリー期の純然たるクロノグラフが持つシンプルさと、70年代のファンキーなデザインのあいだにうまく収まっている。ケースはずっしりと分厚いが、サイズは36mmと小振りで、鮮やかな色もいくつか配されているが、完全なディスコスタイルではない。

PR516 クロノグラフ メカニカルはこの外観を一新し、ケースサイズを41mm、厚さを13.7mm(ラグからラグまで49mm)へと変更した。その厚さの約1.5mmはボックス型のサファイア風防によるものだ。直径とラグからラグまでの長さは均整のとれた時計になっているが、ケースは厚みがあり、特にミドルケースは平坦で曲線がない。手首につけてみると、チューダーのブラックベイ クロノをほうふつとさせるが、ほんの少しサイズが小さい。特に手巻きムーブメントであることを考慮すると、PR516があと数ミリ薄くなっていれば、ほかの競合製品とは一線を画していたと思う。

ただ実際に使ってみると、PR516は非常によくできている。41mm(もし5年前に登場していたら、これは42mm…あるいは44mmだったかもしれない)、ノンデイトで、目を引くほどの存在感を放つルックスを持ち、そして伝統にインスパイアされたデザインだ。

写真を見てわかるように、PR516は上から見ると均整が取れているが、横から見ると厚みが目立つ。しかし、分厚いクロノグラフはティソ特有の問題ではない。2倍、3倍、あるいは4倍以上の価格のブランドの製品を見てみると、同じような大きさのものをよく見かける。

PR516のサファイア製シースルーバックのなかには、Cal.A05.291が収められている。これはバルジュー7753をベースにしたクロノグラフムーブメントであり、そこから基本的な自動巻き機構を取り除いて、2万8800振動/時、約68時間パワーリザーブを発揮する手巻きクロノグラフとして動作させた。なお価格帯では当然といえば当然だが、ムーブメントはインダストリアルな仕上がりをしている。

ティソは文字盤とベゼルの仕上げにこだわった。マットブラックの文字盤には、オレンジ色のクロノグラフ秒針と、30分積算計インダイヤルに淡いブルーとレッドというポップなアクセントを施している。またインダイヤルには、コントラストを際立たせるためにシルバーの同心円リングを採用。針とインデックスはスーパールミノバでコーティングし、ベゼルのスケール部分にもちょっとした遊び心を加えている。

この文字盤について唯一の批判は12時位置のサインだ。これはPRXコレクションについて言及したことと似ている。(1)ティソ以外には何の意味もないため“1853”を廃止して欲しく、(2)このようなヘリテージにインスパイアされたモデルには、古いスタイルのフォントやPRクロノのような時計で見られるブロックTのロゴも見てみたい、ということだ。文字盤にはすでに遊び心のあるヴィンテージの雰囲気を漂わせているが、それに合わせたロゴ加工があれば最高にいい。

ケースはサテン仕上げのほか、傾斜したポリッシュ仕上げの面取りが施されている。ブレスレットのフィット感と仕上げも、27万3900円(税込)の時計としては見事なものだ。ブレスレットも同様に、エッジはポリッシュ仕上げで、フォールディングクラスプに向かって20mmから18mmへとテーパーがつけられ、3段階のマイクロアジャスト機構が備わっている(使用には工具が必要)。ブレスレットはクイックリリース式のため、工具なしで取り外してストラップの交換ができる。この価格で工具不要のマイクロアジャスト調整ができるブランドがほかにもあると考えると、もう少しクラスプがアップグレードされていてもよかったと思うが、ブレスレットの頑丈さと快適さには感動した。

スペックシートから、この時計が私の16cmの手首に合うとは思っていなかった。しかし、ラグからラグまでが49mmのため、比較的コンパクトにつけられ、手首からはみ出すこともない。数日間着用したが、まさに日常使いできるクロノグラフであった。厚みはあるがまったく邪魔にならないし、どこかチャンキーな雰囲気は、スペックアップされているとはいえ、ファンキーな70年代への扉を開くきっかけとなったオリジナルのPRクロノにどこか忠実な感じがする。

価格は27万3900円で、30万円以下の機械式クロノグラフという真の競争相手はあまりいないだろう。ハミルトンのイントラマティック クロノグラフ H ブレスレットは32万3400円、ティソ PRX オートマティック クロノグラフは28万7100円、昨年セイコーが新たにリリースしたスピードタイマー メカニカルクロノグラフは35万2000円(すべて税込)だ。また、ファーラン・マリの新しい機械式クロノグラフは2750スイスフラン(日本円で約46万9000円)である。

しかし、伝統にインスパイアされた機械式クロノグラフが欲しいなら、ティソ PR516は独自の道を確立している。前述したように、その意図も手首に巻いたときの感触も、ブラックベイ クロノを想起させる。でも正直、PR516のほうがおもしろいと感じるのだ。はっきり言って両者は競合しないが(PR516は3分の1の価格だ)、これはティソがヘリテージウォッチでどれだけ進歩したかを物語っている。同じような時計を3倍の値段で買うことに疑問を感じてしまう。

もちろん、完璧ではない。30万円以下の時計がそうであるように(あるいはどんな価格でもそうかもしれないが)、妥協は必要だ。いずれにしてもPR516は新たに市場に加わった手堅い製品である。機械式クロノグラフのPRXではなく、愛好家と一般の消費者層の両方を魅了する時計ではないだろうが、それで十分だ。同じ場所に雷が落ちることはないが、最近のティソはコンスタントに成功を収めており、なんだかうれしい気持ちになる。

ティソ PR516 クロノグラフ メカニカル。直径41mm、厚さ13.7mm、ラグからラグまで49mm。100m防水。フォールディングクラスプ付きステンレススティールブレスレット。手巻きCal.A05.291搭載、時・分・秒表示、クロノグラフ。約68時間パワーリザーブ、2万8800振動/時。27万3900円(税込)

オメガとスウォッチがムーンスウォッチの新しいバリエーションを発表!

“溶岩(Lava)”から“北極の光(Polar Lights)”、そしてその狭間に位置する“砂漠(Desert)”まで。これらは今まででもっともクリエイティブなムーンスウォッチのリリースかもしれない。

このふたつのブランドは本日、3本の新作を発表した。満月にインスピレーションを受けた絶妙なバリエーションや、スヌーピーにインスパイアされた2本のリリースとは異なり、これらは地球に着想を得た非常にクリエイティブなものとなっている。

上の写真は“ミッション・オン・アース – ポーラーライツ(Polar Lights)”と呼ばれるモデルで、ケースと針はターコイズブルー(いや…、かなりグリーンがかったターコイズブルー)、文字盤にはアベンチュリンガラスの文字盤からインスピレーションを得たシルバーの小さな薄片の“星”が散りばめられている。また、“ミッション・オン・アース – デザート(Desert)”はサンドカラーで、文字盤とストラップは世界の地表の5分の1を占める砂漠にインスパイアされたグレージュ(トープ)を選択している。

最後に、地球上にあるおよそ1670の活火山から流れ出る高温の溶岩(もちろん、高温の火山灰やガスも)にインスパイアされた“ミッション・オン・アース – ラヴァ(Lava)”。この時計のさらにクールな点は、オレンジ色の秒針を備えたスピードマスター“ウルトラマン”へのオマージュである。3つのサブダイヤルの数字、およびインデックスは、オメガのアラスカIIおよびプロジェクトIIIのスピードマスターと同じように放射状に配置されている。

これら3つとも、6月15日(土)にスウォッチの“厳選された”店舗(実際にどのように店舗が選ばれているかは不明)で4万700円(税込)で販売される。

信じられないことに、ムーンスウォッチの発売からもう2年が経とうとしている。そしてそれだけの時を経たのち、直近のリリースでスウォッチはゆっくりと地球に戻ってきている。

登場したばかりのムーンスウォッチは、太陽系の主要な天体(私たちの太陽系を含む)のほとんどをカバーしていた。それが熱狂の幕開けとなり、時計はかつて私たちが見たことのないような形で広く世の中に浸透していった。その後、スヌーピーの魅力をフルに引き出した“ミッション・トゥ・ムーンフェイズ”が登場して、私も初めてムーンウォッチを手にすることになった。しかし今回発表されたのは、私たちが故郷と呼ぶ宇宙に浮かぶ大きな星をより深く見つめることに特化した、ムーンウォッチ初のモデルである。ときどきムーンウォッチ疲れとでも呼ぶべきものに悩まされることがあるが、“アベレージ・ジョー(ここでは時計愛好家ではない普通の人々の意)”を時計の世界に引き込んだ彼らのパワーは認めるべきだし、私でさえこれらの新しい時計はかなりクールだと言わざるを得ない。

写真からの判断になるが、新作の“ポーラーライツ”は、アベンチュリン風のキラキラした文字盤で私のお気に入りになるだろう。“ラヴァ”のインスピレーション源がスピーディの“ウルトラマン”であることについては、オメガも素直に認めている。このふたつのブランドは、オリジナルのスピードマスターが有するコレクター心をくすぐる難解な情熱をよく理解しているのだ。サンドカラーモデルの“デザート”は、今回の3モデルのなかではもっとも落ち着いた印象で、“ミッション・トゥ・サターン”や“ミッション・トゥ・ジュピター”を彷彿とさせる(この2モデルは、いずれもオーソドックスなカラーで人気を博している)。

基本情報
ブランド: オメガ × スウォッチ(Omega x Swatch)
モデル名: ムーンスウォッチ ミッション・オン・アース ラヴァ、ポーラーライツ、デザート(MoonSwatch Mission On Earth Lava, Polar Lights, and Desert)

直径 42mm
厚さ: 13.25mm
ケース素材: オレンジ、ターコイズ、サンドカラーのバイオセラミック
文字盤色: ブラック、極小のシルバーがきらめくダークブルー、トープ
夜光: あり、インデックスと針
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ベルクロストラップ

ムーブメント情報
キャリバー: クォーツクロノグラフムーブメント
機能: 時・分・秒表示、クロノグラフ

価格 & 発売時期
価格: 4万700円(税込)
発売時期: 6月15日(土)、一部のスウォッチストアにて

優れた時計と同じように手触りの良いパワフルなフォルムに純粋な機能を備えています。

ほぼすべてのアイコンのステータスは、その遺産の上に築かれています。クロノグラフ1は911をデザインしたフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェによって設計デザインされたものです。文字盤は911のダッシュボードのメーターから着想を得ており、時間を伝えるだけでなく、最速のラップから日々のラリーまでの時間を測定するのに役立ちます。

ブラックアウトというコンセプトはほかのブランドでも試みられたものですが、ポルシェデザイン クロノグラフ1はフォルム、機能、視認性の高さを融合させた先駆者でした。ほかの真のアイコンと同様、このモデルも時代の最先端を行くものであったため、発表と同時に賛否両論が巻き起こりましたが、今日クロノグラフ1は不朽の名作として語り継がれています。そこでHODINKEEとポルシェデザインがコラボレーションし、350本限定のトリビュートモデル、

コラボレーションのためにHODINKEEらしいタッチをほんの少し加えただけで、新しいクロノグラフ1はよく見慣れたものになっていると思います。実際あまり紹介する必要もないと思いますが、簡単に見ていきましょう。

1972年、クロノグラフ1がF.A.ポルシェによって設計されたとき、それは実用的なツールであり、物議を醸すような時計ではありませんでした。当初この時計は選ばれた従業員だけが着用する時計として作られたのです。しかし、すぐに噂が広まり、ポルシェ愛好家たちが自分のものとして欲しがるようになりました。やがてこの時計は一般に向けて発売され、インスピレーションの源となった911と同様にポルシェ正規販売店で販売されました。その後、クロノグラフ1は幾度かのモデルチェンジを経験し、ポルシェデザイン50周年を記念して2022年にオリジナルに忠実なオマージュとして復刻されています。

F.A.ポルシェの仕様にほぼ忠実でありながら、現代向けにアップデートされています。スイスのゾロトゥルンにあるポルシェの時計工場で設計、開発、製造されました。その際にF.A.ポルシェが現代のリリースに向けてどのような改良を加えただろうかと想像を巡らせました。その答えは? 改良の余地はほとんど無いという結論に達しました。アイコンを改良するのは難しいのです。

オリジナルのクロノグラフ1のデザインをリフレインしながら、ケースは直径40.8mm、厚さ14.15mmに。それとマッチするように装着されたブレスレットは、耐久性に優れた超軽量チタニウム製で、マットブラックのチタンカーバイドコーティングが施されています。ヴィンテージ911の雰囲気をより現代的な仕様で再現しようとするポルシェ愛好家の最近のバックデート志向のように、クロノグラフ1 HODINKEEモデルのスーパールミノバ®は、文字盤のインデックスの方が針よりもやや濃い、レトロ風の色合いを帯びています。この微妙な調整により、オリジナルの文字盤の経年変化に慣れ親しんだヴィンテージ・クロノグラフ1の愛好家にとって、この新しい時計はより親しみやすいものとなっています。

ダイヤルにはオールドスクールなポルシェデザインのロゴとフォントが使用され、アメリカ市場への敬意を表して「1 Mile」グラフィックが再現されています。6時位置の「H」は、文字盤上で唯一ホディンキーにちなんだもので、軍用モデル「3H」に使用された1972年のポルシェデザイン・レッドで表現されています。

日本のポルシェデザインとHODINKEEファンコミュニティへのオマージュでもあります。そのため、3時位置のデイ&デイト表示は英語と日本語に対応しています。クリックとリューズを数回回転させるだけで、どちらの言語で表示されるかを選ぶことができます。

ダイヤルデザインは、上部に30分積算計、下部に12時間積算計、9時位置にランニングセコンドを配した、アイコニックな6-9-12サブダイヤルレイアウトを継承しました。しかし今、そのボンネットの下には、超高精度のポルシェデザイン・キャリバーWERK 01.140が搭載されています。このムーブメントは、歴史的なポルシェデザインのロゴ、レタリング、限定ナンバーを示すチタン製のクローズドケースバックの裏で安全に収納されています。また、HODINKEEの名前とアイコン、「2024」という年、そして「TRILOGY – CHAPTER 1」という刻印が施されています。

初代911や1972年のポルシェデザインの黎明期のように、HODINKEEの新しいクロノグラフ1限定モデルは、物語の始まりに過ぎません。しかし、この新しいクロノグラフ1がアイコンになるかどうかを決めるのは、時計自体ではなく、それを身につける人々と彼らがそれを使って行うことなのです。

シーファラーは、海、砂浜、そして太陽の情景を思い起こさせる時計です。

モダンなカレラでありながら、私たちが特に愛するヴィンテージホイヤーのデザイン哲学をしっかりと受け継いだ1本です。このコラボレーションでは、1968年のカラーリングとベゼルデザインをそのままに、タグ・ホイヤーの現代的な魅力が見事に融合されています。

1940年代後半から、ホイヤーはレーサー、パイロット、冒険家、そしてアウトドア愛好者のためにツールウォッチ、つまり特定の目的に特化したクロノグラフを製造することを使命としていました。これらの時計の一部は、アバクロンビー&フィッチを含む小売パートナー向けにホワイトラベルで提供されていました。約1世紀前、アバクロンビー&フィッチは自らを「世界一のスポーツ用品店」と謳い、テディ・ルーズベルト、アメリア・イアハート、アーネスト・ヘミングウェイといった著名なアウトドア愛好家たちを装備で支えていました。ニューヨークにある巨大な旗艦店には、かつて若き日のジャック・ホイヤーが担当していた時計部門があり、1940年代初頭、ホイヤーはこのニューヨークの小売店向けに、防水ケースに収められた高級なスリーレジスタークロノグラフの製造を開始しました。それはまさに冒険にふさわしい時計だったのです。

1947年か1948年頃、アバクロンビー&フィッチからホイヤーに対して、ジョン・オールデン・ナイトのソルナー理論を活用した時計デザイン依頼がありました。この理論は、太陽と月の位置に基づいて、魚や獲物が最も活動的になる時期を予測することができます。また、月が潮汐を支配しているように、この概念は海での潮の満ち引きの時期を予測するのにも役立ちます。ナイトは毎年、狩猟や釣りに最も適した日や時間を示す一連のチャートを発表していました。

当時のアバクロンビー&フィッチの社長であったウォルター・ヘインズは、この理論を活用したタイドインジケーターを備えた時計のデザインに関する特許を取得し、シャルル・エドゥアール・ホイヤーに手紙を書き、この新しいデザインの製造を依頼しました。

ジャックの高校時代の物理教師の助けを借りて、ホイヤーは情報を正確に記録する複雑機構を開発することができました。それは、29.5日の月の周期のちょうど2倍の期間である59日ごとにゆっくりと回転する文字盤を備えたものでした。

タイドインジケーターは、4時位置に追加されたプッシャーを簡単に操作することで、地元の潮汐表に合わせて更新することができました。最初のモデルは、控えめなクリーム色の文字盤と、6時位置に配置されたテクニカラーの太陽の文字盤を備え、これが日中に回転して満潮と干潮の時期を示すものでした。こうして、ソルナーが誕生します。

この新機能は予想通り、非常にニッチなものでした。しかし、発売後すぐに、ホイヤーが開発したデザインと技術は、アバクロンビーの依頼により、3つのレジスターを持つクロノグラフ機能と組み合わされました。通常9時位置にあるはずのランニングセコンドレジスターの代わりに、ホイヤーはソルナーのタイドダイヤルを搭載。クロノグラフと組み合わせることで、3時位置には青と白のレガッタタイマーが追加され、より多くの水上冒険に対応することができました。このタイドクロノグラフはアバクロンビー&フィッチによってシーファラーという名前で販売され、ホイヤーのマルチパーパスクロノグラフの新時代が幕を開けたのです。

約10年間、シーファラーの基本的な美学は大きく変わらずに保たれていました。しかし、ホイヤーのヴィンテージカタログのなかで、このブランドの変遷を最もよく示している時計はシーファラーかもしれません。他のアイコニックなモデルとは異なり、シーファラーは専用のケースが与えられることはありませんでした。次の20年間で、文字盤の色、ベゼル、ケースの形状やサイズが変化し、1960年代の終わりにはよりモダンでスポーティなスタイルにシフトしていきました。

1968年、ホイヤーはオリジナルシーファラーの最終バージョンを製作。頑丈なオータヴィアのコンプレッサーケースを採用したシーファラーRef. 2446Cは、100mの防水性能を持ち、これまで以上に海にふさわしい時計となりました。文字盤はダークアンスラサイトグレーで覆われ、回転式の分ベゼルが追加され、タイミング機能がさらに強化されました。タイドインジケーターは、日中の満潮と干潮の時間を視覚的に示す二色の青色を採用。シーファラー Ref. 2446C は、シーファラーの最後のバージョンとなり、それが今日まで続いています。

過去と現在のタグ・ホイヤーの魅力すべて
タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ シーファラー × Hodinkeeは、私たちのお気に入りであるシーファラーのリファレンスを現代的で頑丈かつ魅力的に再解釈したモデルです。シーファラーには専用のケースが存在しなかったため、この限定版をオータヴィアスタイルのケースではなく、42mmのカレラ グラスボックスケースに収めました。このドーム型サファイアクリスタル風防は、ヴィンテージのプレキシガラスのプロファイルを再現しつつ、耐久性と透明度が大幅に向上しており、水上での使用において重要な要素となっています。

オリジナルのカラースキームに忠実に、ブラックオパーリンの文字盤には、レガッタとタイドサブダイヤルにスカイブルーとロイヤルブルーの色合いがアクセントとして加えられています。カレラはベゼルがないケースであるため、オリジナルの美学を保つために、ブラックオパーリンの見返し内にベゼルを移動させました。

よく見ると、シーフェアラーのロゴは6時位置のサブレジスターに移され、後期のリファレンスの特徴的なブロック体からインスピレーションを得たカレラのフォントが使用されています。後期のシーファラーRef.2446Cのフィーリングはそのままに、未来に目を向けるタグ・ホイヤーの精神を尊重し12時位置に現在のタグ・ホイヤーとカレラのロゴを配しました。そして、現行のカレラモデルから日付窓が取り除かれたことにお気づきでしょう。

最後に、この時計にはブラックのテクスチャード・ラバーストラップが装着されており、海上での使用にも適しています。この時計は、まさにタグ・ホイヤーの過去と現在のすべてを体現しているのです。

ダイヤル
オリジナルのホイヤー シーファラー Ref.2446Cにインスパイアされたこのコラボレーションは、1968年のオリジナルのカラースキームとベゼルスケールを現代風にアップデートして維持しています。時計にはブラックオパーリンの文字盤が採用されており、内側の見返しには60秒スケールがあります。3つのサブレジスターはスカイブルー、シルバー、ホワイトの見事な組み合わせが特徴で、これはヴィンテージ後期のシーファラーを彷彿とさせます。9時位置にはタイドダイヤル、30分のヨットタイマーダイヤル(ヨットレースの5分間隔で分割)とランニングセコンドのサブダイヤルが配置されています。

グラスボックスコンセプトの未来志向を反映し、12時位置には現代のタグ・ホイヤーとカレラのロゴが施されています。オリジナルへのオマージュとして、6時位置には新たにデザインされたシーファラーのロゴが。文字盤は、昼間は白く、夜間は緑に光るスーパールミノバを施した磨き上げられたスティール製インデックスと針で強調されています。

ケース
タグ・ホイヤー カレラ クロノグラフ シーファラー × Hodinkeeは、繊細なサテン仕上げが施されたステンレススティール製の42mmのカレラ グラスボックスケースに収められています。ラグ幅は22mm、ラグからラグまでの長さは48.6mm、厚さは14.4mmです。クロノグラフのプッシャーはケースの右側に配置され、新たに「TIDE」プッシャーが左側に設けられています。

すべての時計は100mの防水性を確保するために、水中での耐圧テストが実施されています。ケースバックには、このコラボレーションを記念して「TAG Heuer x Hodinkee」の刻印と、限定版の個別番号XXX/968が施されています。

ブランド10番目の“基本発明”にあたるナノ・フドロワイアントEWTを発表した。

この時計は圧巻の仕上がりだ。同ブランドの発明や功績を称えるインヴェンション ピースシリーズにはトゥールビヨンが頻繁に採用されており、この時計にも同機構の姿が見られる。ダブルトゥールビヨン 30°から始まった軌跡の集大成として登場したこのモデルは、驚くほど着用しやすいモノプッシャー式クロノグラフ(フライバック式で、同社初のクロノグラフとなる)に初のフライングトゥールビヨンを搭載しているが、注目すべき点はそれだけではない。

タンタル製ベゼルとスケルトンケースバックを備えた直径37.9mm×厚さ10.49mmのホワイトゴールド(WG)製ケースを使用したこのモデルには、2万1600振動/時で駆動するトゥールビヨンケージに基づき6分の1秒単位の表示を行う常時作動のフドロワイアント秒針(または“ライトニング秒針”とも呼ばれる)も搭載されている。この機構は垂直方向を保ちながら60秒で1周するトゥールビヨンに直結する。トゥールビヨンの振幅を直接伝えることで通常のフドロワイアント輪列の余計な部品を省き、ムーブメントの小型化(直径31mm)と部品数の削減(合計428パーツ)に成功している。

厚さはわずか10.49mmしかない。

もちろん限界もある。たとえばクロノグラフ作動時のパワーリザーブは、24時間しかない(クロノグラフ非作動時の総パワーリザーブは公表されていない)。そしてもうひとつ挙げると、この非常に高価な46万5000スイスフラン(日本円で約8200万円)のナノ・フドロワイアントEWTは冗談抜きで11本しか製造されないことだ。しかしすべてのモデルに、コレクターのあいだで長年定評があるグルーベル・フォルセイならではの手仕上げが施されている。

金額や入手困難な点を気にしないなら、このモデルは今年発売された時計のなかで私が手に入れたい時計のトップ3に入る。銀行強盗をして信じられない金額を手に入れたかのような興奮で汗をかきつつ、存在しない上限額のクレジットカードを差し出したくなる最初の時計になるかもしれない(いや、実際にこの時計を手に入れるために襲うべき場所は銀行ではないだろうが)。

値段のことはちょっと脇に置いておこう。ビンス・マクマホン(Vince McMahon)氏のネットミーム(アメリカのプロレス団体WWEのCEOであるビンス氏が、興奮や驚きを次第に強めていく様子を切り取った一連の画像。彼が徐々に驚き、最後には大興奮で椅子からのけぞるようなリアクションを見せる)を見たことはあるだろうか? 同僚にこの時計のことを説明した際、まさにそのミームのような反応をされた。大きさがたった37.9mm? それだけでも注目に値する。厚さがわずか10.49mmだって? 気に入った。モノプッシャークロノグラフ? なんとしても欲しい。さらにフライングトゥールビヨンと、トゥールビヨンケージに直接取り付けられたフドロワイアント秒針? もう何の話をしているのかわからない! これはまさに驚異的だ。

先に述べたとおり、サイズだけでもこの時計は特筆に値する。厚みはわずか10.49mmだが、ラグの位置や形状、長さのために手首につけると少し浮いたような感じがする。タンタル製の外周リングにサファイアクリスタルを備えたケースバックが背面に立体感を与え、さらにタンタル製ベゼルとドーム型風防もフォルムに奥行きを加えている。直径はややモダンな印象だが、手首で少し高く見える点はパテックのRef.5004(厚さ12.8mm)を彷彿とさせる。ただ、どちらも毎日つけていたいくらい素晴らしい。

ベン・クライマーにこの時計について話したところ、これは時計愛好家、特にグルーベル・フォルセイのターゲット層が10年以上前なら熱狂したであろう時計だと彼は言った。私見だが、ここ数年でグルーベル・フォルセイへの注目はやや薄れているように感じる。今取り上げているのは約54万ドル相当の時計なので、顧客数が非常に限られているのは事実だが、この価格帯の時計を買う人は意外といる。それでも過去2年間にわたり、高級時計コレクターの集会のために世界中を飛び回ってきたなかで、実際に手首にグルーベル・フォルセイをつけている人を目にしたのは2回だけだった。そしてそのどちらも、今月初めにシンガポールで開催されたIAMWATCHでの出来事だった。いったいこの会場で何が起こっていたのだろうか?

グルーベル・フォルセイはここ数年、購買者が各々のPRによって耳目を集める有名ブランドに流れていくなかでブランドとしてのアイデンティティを見失いかけていた。同ブランドは急速に製造数を拡大し、2021年の年間130本から翌年には2022年には260本に倍増した。また(短期間であったようだが)よりシンプルなモデルを投入してより広範な層への参入を試みたが、そうした製品でさえ驚くほど複雑な構造を持ち、価格は数千万円に達していた。さらにグルーベル・フォルセイには、異なるふたつのデザイン言語が存在する。

コンヴェクスラインはより現代的な購買者を引き付けるかもしれないが、リシャール・ミルと競合することになる。リシャール・ミルは(品質や時計製造技術は別として)同じ価格帯で同様のニーズを満たし、年間5600本以上の生産量により比較的入手しやすいブランドとなっている(とはいえ入手が容易なわけではないが)。しかしこの時計はまさに今のグルーベル・フォルセイに必要なものであり、そしてあらゆる面で圧倒的な存在感を放っている。

稲妻のようなスピードで動く針をぜひ見て欲しい。

グルーベル・フォルセイの“ナノメカニクス”や“ナノジュールス単位”でのエネルギー管理については、今回は深く触れないでおこう。その真偽を確かめるには情報が足りず、単なるマーケティング用語となっている可能性もあるからだ。理解を深めるには、スティーブン・フォルセイ(Stephen Forsey)氏にフォローアップで話を聞く価値があるかもしれない(実現するかどうかは今後わかるだろう)。

しかし2万1600振動/時のテンプによって直接駆動され、1秒を6分割して動くフドロワイアント秒針(私が好む複雑機構のひとつだ)という点だけでも、これは驚異的な成果だ。グルーベル・フォルセイによれば、従来のフドロワイアントは1回のジャンプで30μJ(マイクロジュール)を消費するが、ナノ・フドロワイアントは1回のジャンプで16nJ(ナノジュール)しか消費せず、圧倒的な効率化を実現しているという。

グルーベル・フォルセイらしいデザインで、クロノグラフのコラムホイールからフロスト加工、鏡面研磨、面取りに至るまで、ナノ・フドロワイアントEWTに搭載されたムーブメントの各パーツは完璧に仕上げられている。最初はブリッジの配置やサイズがクロノグラフに期待される歯車やレバーの存在感を損ねていると思ったが、時間が経つにつれてそのシンプルさが美しいことに気づいた。

おそらくこれはグルーベル・フォルセイがこれまでに手がけたなかで最も複雑なモデルだが、ファンを熱狂させるような時計はこれにとどまらず今後も登場し続けるだろう。この時計の値段は驚くべきものだが、今年見たなかで最もクールかつ印象的な時計であり、手に入れられるのは選ばれし11人だけだ。

グルーベル・フォルセイ ナノ・フドロワイアントEWT。直径37.9mm、厚さ10.49mmのWG製ケース、タンタル製のベゼルとケースバックリング。30m防水。ゴールド製の多層ダイヤル、ロジウムカラー、エングレービングが施されたブラックラッカー仕上げの時表示リングと分表示サークル、トゥールビヨンが覗く開口部、ゴールドのスモールセコンドとクロノグラフミニッツカウンター、ポリッシュ仕上げの面取り。フロスト仕上げのフドロワイアント、秒単位の目盛りとブラックラッカー仕上げ。時・分表示、ワンミニットフライングトゥールビヨンと連動するライトニング秒針、モノプッシャークロノグラフ。2万1600振動/時で動作する手巻きムーブメントのクロノグラフ作動時のパワーリザーブは24時間。動物素材不使用の手縫いストラップ。WG製ピンバックル、手彫りのGFロゴ入り。価格46万5000スイスフラン(記事掲載時約54万ドル/日本円で約8200万円)。限定11本。

フェンディの厚底スニーカー「フェンディ マッチ」が新登場。

「フェンディ マッチ」プレイフルな新作スニーカー
フェンディスーパーコピー マッチ」プラットフォームスニーカー 207,900円
「フェンディ マッチ」プラットフォームスニーカー 207,900円
「フェンディ マッチ」新作スニーカーは、2021年に発売されたオリジナルモデルをベースに、5cmのプラットフォームソールと小さめの「FF」ロゴ、そして取り外し可能なチャームを加えてアレンジを加えた厚底スニーカー。ホワイトやピンク、ミントグリーンといったクリーミーなカラーとポップなディテールによる、プレイフルな表情が魅力だ。

「フェンディ マッチ」プラットフォームスニーカー 207,900円
「フェンディ マッチ」プラットフォームスニーカー 207,900円
「フェンディ マッチ」に付属するミニチャームは、ふんわりとしたポンポンを配して人形のように仕上げたチャームと、「ペカン」ストライプタグ付きチャームの2種。アッパーのカラーと連動したマルチカラーのシューレースに取り付けて、大胆なアクセントをプラスすることができる。
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【詳細】
「フェンディ マッチ」プラットフォームスニーカー
発売日:2025年7月17日(木)
展開店舗:フェンディ直営店、フェンディ公式オンラインストア
価格:207,900円

【問い合わせ先】
フェンディ ジャパン
TEL:0120-001-829

今回の新作UR-150は時計としての革新性ももちろんすごいが。

新作UR-150を説明するには、“よりワイドなレトログラード表示”と表現するのが適しているかもしれない。ウルベルクの特徴であるサテライトディスプレイは通常120°の弧を描くが、このモデルでは240°に広がっている。では、これは何を意味するのか? まず、サテライトディスプレイ全般の仕組みを解説しよう。サテライトディスプレイは時計回りに進むが、時間が経過してもディスク自体が回転するわけではない。赤いフレームの先端には矢印が付いており、文字盤外周にあるミニッツトラックを指して時間を示す。そして分針が60分に近づくと、フレーム全体が勢いよく0に戻り、ディスクが進んで次の時間をフレーム内に表示する仕組みだ。

秒表示がないため、分目盛りを広く配置することで視認性が向上している(これはムーブメント自体の精度ではなく、読み取りの精度の話だ)。つまり、分表示がより読み取りやすくなっているのだ。時間の設定は12時位置のリューズで行うのだが、その操作は非常に触覚的な体験だ。リューズを操作するとムーブメント全体がゼロに戻るスナップを実際に感じ取れる。通常、12時位置にリューズを配置するのは扱いづらいものだが、リューズは大振りなサイズで操作性のバランスがよく、なおかつ邪魔にならない位置に収まっている点が秀逸だ。

この新作での主な功績は、新しいムーブメントが文字盤上の表示範囲を広げたこと自体ではなく、その実現方法にある。ここはウルベルクのフェリックス・バウムガルトナー(Felix Baumgartner)氏に説明を任せよう。

「すべてのサテライトを駆動し、時針を誘導し、各要素が正確なタイミングでジャンプするようにするために、新しいサテライトコンプリケーションシステムを設計しました。このシステムは、サテライトとベースムーブメントのあいだに配置されたフライングホイールとピニオンを中心に構築されています。これがカムの“ガイディングスレッド(動きを導く指針)”を読み取り、追従します。そのため従来のマルタ十字に基づく装置を、カムとラック(土台)システムに置き換えました。この新しい設計には非常に特殊なバネの開発が必要で、その製造は自社工房で独自に加工する必要がありました。この動きの躍動感をより視覚的に楽しめるようにするため、通常の60から0の目盛り間の距離を2倍に拡大しています」と、彼は語る。

より興味深いのは、視認性の向上が主目的ではなく、ムーブメントの技術的な成果を強調するという意図の副次的な効果だったという点だ。これらの動作はわずか100分の1秒と、一瞬で完了する。これについてサソリの一撃のようだとブランドは表現している。そしてカルーセルアームに取り付けられたウェイトは、これまでで最大のサイズを誇るだけでなく、このスナップ動作の力をバランスよく制御するために不可欠な要素となっている。

同ムーブメントは自動巻きだが、巻き上げの速度や使用時に発生する衝撃、さらにはムーブメントが動作する際の力を抑えるため、ブランドは二重のタービンシステムを採用している。そしてこのタービンが、衝撃を吸収する仕組みだ。とはいえ何よりも印象的だったのは、ムーブメントの裏側の見た目だ。文字盤側からも多くのメカニズムが見えるが、裏側から見えるローターのデザインはこれまで見たどの時計とも違う独特なものだった。

この時計は有機的なドーム型形状と横から見たときのプロファイルが特徴で、手首にフィットして快適に着用できる。ケースはサンドブラスト仕上げとショットブラスト仕上げが施されたチタンおよびスティールで構成され、ふたつの異なるモデルがそれぞれ異なるカラーで仕上げられている。どちらのモデルも50本の限定生産である。

昨年、シンガポールで両モデルを目にする機会があったが、撮影したのは下に掲載した“ダーク”モデルのみだ。このモデルはアンスラサイトカラーのPVD処理が施されたケースと赤いフレームの分針が特徴である。光の当たり具合によって、ダークのブラックアウトされたケースが少しグレーがかった印象を与えることもあるが、PVD加工のない“タイタン”モデルは、基本的にこのグレーの色味となっている。

下の写真だけ見ると時計があまり手首にフィットしていないように見えるかもしれないが、それはウルベルクが非常に長めのラバーストラップを標準で提供しているからだろう。おそらく、9インチ(約22cm)の手首サイズでも、箱から出したまま特に問題なく装着できるのではないだろうか。写真を撮っていないときに、ストラップを調整して7.25インチ(約18.4cm)の自分の手首にしっかりフィットさせてみたところ、ぴったりと手首に沿った。実際、これまで着用したウルベルクのなかで最も快適だったかもしれない。

新作UR-150 “スコーピオン”の価格は、PVD加工のない“タイタン”モデルが8万8000スイスフラン(日本円で約1500万円)、先述した“ダーク”モデルが8万9000スイスフラン(日本円で約1530万円)となっている。決してお得とは言えない価格だが、ウルベルクへの愛着とブラックアウトされたデザインへの偏愛を考えると、この時計がウルベルクらしい非常にクールな一品であることは間違いない。

人気の桜ダイヤルをクリーミーな色合いに仕上げた、新作のSBGH368である。

2023年、グランドセイコーは手巻きスプリングドライブのCal.9R31を搭載した100本限定のSBGY026を発表した。そして今回、62GSケースに18KRGを採用した初のレギュラーモデルが登場。クラシックなデザインを継承しつつ、より力強く存在感のあるケースデザインとなっている。

ムーブメントには約55時間のパワーリザーブを備える自動巻きのCal.9S85、通称“ハイビート36000”を搭載。ケースサイズは38mm×12.9mmで、シースルーバック仕様ながら100mの防水性能も確保している。ドレスウォッチとしては少しタフすぎるかもしれないが、個人的にはむしろうれしいポイントだ。

グランドセイコー SBGH368は、4月1日より発売を予定しており、希望小売価格は440万円(税込)だ。

昨年日本を訪れた際にこの時計のプレビューを見る機会があり、その素晴らしさに圧倒された。確かに、手巻きムーブメントでデイト表示のないSBGY026のほうが好みかもしれないが、RGと淡いクリームピンクのダイヤルの組み合わせは、間違いなく最高クラスの美しさだった。62GSケースは一般的なドレスウォッチよりも少し大胆なデザインではある(正直、“ドレスウォッチ”と断言すると議論が起きそうで少し怖い)。とはいえ、これが人生最後のゴールドウォッチになるかもしれないと思えるような1本であることは間違いない。

SBGH368
基本情報
ブランド: グランドセイコー(Grand Seiko)
モデル名: ヘリテージコレクション メカニカルハイビート 36000 桜隠し(Heritage CollectionMechanical Hi-Beat 36000 sakura-kakushi)
型番: SBGH368

直径: 38mm(ラグ・トゥ・ラグは44.7mm)
厚さ: 12.9mm
ケース素材: 18Kローズゴールド
文字盤: カッパーピンク
インデックス: 18KRG製アプライド
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: クロコダイルレザーストラップ、3つ折りクラスプ付き

SBGH368
ムーブメント情報
キャリバー: 9S85
機能: 時・分表示、センターセコンド、日付表示
パワーリザーブ: 約55時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: ハイビートの3万6000振動/時
石数: 37
クロノメーター: なし、ただし日差+5~-3秒
追加情報: 耐磁4800A/m

価格 & 発売時期
価格: 440万円(税込))
発売時期: 2025年4月1日発売予定
限定: なし

ブルガリ×MB&Fが再びコラボレーションし!

史上最も未来的な“セルペンティ”が誕生!

“アイコン”という言葉は時計の世界でよく使われるが、ときとして乱用されすぎている感もある。しかしブルガリのセルペンティなら、本物のアイコンと呼ぶにふさわしい。蛇の頭を模したデザインが特徴のこのシリーズは、まさに唯一無二の存在だ。手首にぐるりと巻きつくセルペンティ トゥボガスは、1周、2周、あるいは何重にも巻くことができるカフスタイルで、今もっとも注目されている“イット(ホットな)”ウォッチのひとつ。一方セルペンティ セドゥットーリは、同じデザインの流れをくみつつ、よりクラシックなブレスレットウォッチとして仕上げられている。そしてセルペンティの極みともいえるのがセルペンティ ミステリオーシ。蛇の頭のなかに時計が隠されたこのモデルは、世界最高峰のジェムセッティングや漆芸、ジュエリー技法が惜しみなく施された、まさに芸術品のようなアイテムだ。
ただしこれまでになかったものがある…少なくとも、ブルガリ オルロジュリーのプロダクト・クリエイション・エグゼクティブ・ディレクター、ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ(Fabrizio Buonamassa Stigliani)氏の目には。それは大胆でマスキュリンなセルペンティで、もっと幅広い人たちの手元にこのアイコンを届けるモデルだ。そしてそれが今日ついに登場する。ブルガリと未来的なウォッチメイキングで知られるMB&F​が2度目のコラボレーションを果たし、シンプルに“セルペンティ”と名付けた新作を発表。ただその名前とは裏腹に、これまでのセルペンティとはまったく異なる、新しいスタイルの時計となった。

マックス・ブッサー(Max Büsser)氏とファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏。Photo courtesy MB&F and Bulgari.

LVMHでファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏とマクシミリアン・ブッサー(Maximilian Büsser)氏のコラボの噂を聞いたとき、とてもワクワクした。この業界でも特に好きなふたりで、時計そのものはもちろんだがそれ以上に彼らの個性や視点がおもしろい。ただし前回のレガシー・マシン フライング T アレグラは、ブルガリのハイジュエリーの魅力を最大限に生かした作品だった。だからこそ新しいコラボの話が出たときは、まだセルペンティという名前すら聞く前から、“今回はもう少し自分向きの時計になるかも?”と期待していた(まあその“自分”になるには、もっと深い懐が必要なのは間違いない)。

ジェンダーウォッチの話はひとまず置いておいて、これまでのセルペンティが主に女性向けにデザインされ、愛されてきたのは間違いない。セルペンティのデザインは基本的に蛇のビジュアルにフォーカスしていて、ブルガリはこれを“永遠の再生と大胆なメタモルフォーゼの象徴”と呼んでいる。だが今やその枠を超えて進化してきた。ではブルガリ×MB&Fのセルペンティはどんな形になるのか? スタイリッシュなブレスレット? カフ? それとも鱗や舌がついている? さすがにそこまで振り切ってはいないものの、それでもしっかりMB&Fらしさが詰まった仕上がりになっている。

MB&Fが好きなら、この時計のベースがどこから来ているかすぐにピンとくるはず。ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏のアイデアのヒントになったのは、2020年に発表されたMB&FのHM10 “ブルドッグ”だ。HM10はドーム型のディスプレイをふたつ備えていて、左が時、右が分を表示。その丸みを帯びたヘッドデザインが、まるで目のように見えるというユニークなスタイルだった。

ブルドッグはどちらかというとカエルっぽい気がする(ちなみに“ranine”がカエルっぽいという意味なのはもちろん調べた)。カエルは両生類であり蛇みたいな爬虫類とは違うが、進化的な距離ほどにはイメージの飛躍は必要なかった。そんなことを考えつつ、ボナマッサ・スティリアーニ氏はすぐにスケッチを始めて、もっと蛇らしいデザインを探し始めた。

個人的に気に入っているのは、ボナマッサ・スティリアーニ氏が“コブラ”と名付けたセルペンティの初期スケッチのひとつ。目にあたる部分はシャープなスリット状になっていて、全体的に直線的なデザインだ。そしてスケール(鱗)パターンを施したラバーストラップが採用されていた。ストラップ部分は少し安っぽく見えたり、実際のつけ心地も微妙だったかもしれないが、セルペンティ トゥボガスの巻きつくブレスレットのアイデアをうまく取り入れていたのはおもしろい。このデザインを、過度につくり込みすぎたりより多くの人(特にジュエリー系のデザインに挑戦しづらい男性)にとって“つけにくい”ものにせずに仕上げる方法は、正直なかなか思い浮かばない。しかしプレス資料やプレゼンに含まれていたスケッチを見ると、実際にどんな方向性が検討されていたのかが垣間見えて、とても興味深かった。とはいえ最終的に完成したモデルも素晴らしい仕上がりになっている。

ブルガリ×MB&Fのセルペンティはまるでクルマのように、見る角度によって印象が変わる時計だ。それに加えてケースの素材によっても表情が大きく変わる。今回用意されたのは、18Kローズゴールド、グレード5のポリッシュ仕上げチタン、そしてブラックPVDコーティングのステンレススティールの3種類。デザインの流れも独特で、“後部(通常の時計で言えば12時位置)”からアーチを描くラインが、セルペンティの“鼻先”に向かってスッと細くなっていく。上から見ると蛇っぽさに気づきにくいかもしれないが、真正面から“鼻先”を見つめると、その特徴的なフォルムがはっきりと現れる。

個人的に、このデザインの効果が最も際立っているのは18KRGケースだと思う。エッジ部分が光と影を拾いコントラストを生み出すことで、セルペンティのフォルムをより強調している。このケースではグリーンのアクセントが使われており、時・分を表示するドーム部分もグリーンで統一されている。中央部分には、“脳”に見立てられた巨大な14mmのフライングテンプが浮かぶように配置され、ダブルネームのブリッジに支えられている。この独特な構造が、時計のデザインをより未来的でダイナミックなものにしている。

また上から見たときに注目したいのが、ラグのように機能するふたつのリューズ。左側のリューズは11時位置にあり、手巻き用。右側のリューズは1時位置に配置され時刻調整に使われる。この配置が時計のデザインと機能性を絶妙に融合させている。

先に言っておくと、この時計は決して小さくない。まあ、MB&Fの時計が小振りなことなんてほとんどないが、横39mm、縦53mmというやや掴みどころのないサイズ感に加えて、厚さ18mmとなると、正直“つけるのは不可能では?”と思ってしまう。ところが実物を初めて見たとき、一緒にいたベン(・クライマー)が真っ先に口にしたのは“意外とウェアラブルだ”という言葉だった(ベタな表現で恐縮だが本当にそうだった)。

蛇は、別にあったかくてフレンドリーな生き物ではないが、この新しいセルペンティはとにかく凶悪な雰囲気をまとっている。特に鼻先の鋭いデザインがそれを強調している。ただブッサー氏とボナマッサ・スティリアーニ氏は、あえて角ばった形ではなく、より自然なスローピングデザインに仕上げた。このふたりはクルマ好きとしても知られていて、これまでも自動車デザインを取り入れたことがある。ボナマッサ・スティリアーニ氏とは、写真やミッレ・ミリアの話で盛り上がったことがあるが、そんな背景を考えれば今回のデザインでもクルマ的な要素が取り入れられているのはまったく驚きではない。

時計の背面には、スポーツカーのリアウィンドウを思わせる段差のあるサファイアクリスタルを採用。リューズは、まるでクルマのホイールのような形状をしており、その下に配置されたふたつのパーツはV12エンジンのバルブカバーにも見える。全体のデザインは、テスタロッサやランボルギーニ・カウンタックのような直線的でアグレッシブなものではなく、フェラーリ330 P4やディーノ246 GTのような流麗なフォルムに近い。このたとえで言えば、むしろ大歓迎だ。

この時計には、5枚の反射防止コーティングが施されたサファイアクリスタルが使われている。2枚は目にあたり、1枚は脳、もう1枚はエンジンに相当する部分だ。そして5枚目は、いわばムーブメントの“アンダーキャリッジ(足回り)”、つまりこの獣”の腹部にあたる部分に配置されている。そこから覗くムーブメントは、精巧に仕上げられたオープンワークデザインになっており、大きく開いたスペースから歯車の動きを楽しむことができる。手仕上げの美しさが際立つ構造で、さらにパワーリザーブインジケーターも搭載されている。

本作は手巻きムーブメントを搭載しているが、正直なところ単なる時計というよりも、まるで機械仕掛けのアート作品のように感じる。実際これほど時間を合わせなくてもいい、と思えた時計は初めてかもしれない。重要なのは時間を知ることよりも、これを身につけるという体験そのものなのだ。

まだ触れていなかったが、この時計のなかで最も控えめながらも、実はかなりおもしろいディテールがある。それはセルペンティの鼻先に最も近い部分にあるラグだ。これは実は蛇の牙を模している。厳密に言えば、爬虫類学的にはソレノグリフ型の牙にあたる。これは、長くてなかが空洞になっていて(完全にそうではないが)、動かせる構造を持つのが特徴だ。見た目のアクセントになっているだけでなく装着感にも貢献しており、手縫いのラバーストラップとベルクロの組み合わせによって、手首にしっかりフィットするデザインになっている。

ブラックコーティングの時計は本当に好きだ。3種類のセルペンティのなかで一番“危険な香り”がするのは、間違いなくブラックPVDコーティングを施したSSモデルだと思う。ヴィンテージウォッチのようにPVDが少しずつ剥がれて味が出るのか気になるところだが、最近の技術を考えると、そこまで劇的なエイジングは期待できなさそうだ。だが個人的にちょっと引っかかったのは赤い目。ここまで攻めたデザインだと、さすがに少しやりすぎかなとも思う。それにボディの流れるようなラインや口の形の存在感が、ほかのモデルほど際立たない気がする。

個人的に気に入ったのは、チタンと18KRGのモデルだ。それぞれ33本の限定生産で、SSモデルを含めると合計99本。ブルガリとMB&Fのあいだで振り分けられることになるが、49本目の時計をどちらが手にするのか少し気になる。今回の時計はMB&Fが製造を担当していて、こうしたハイエンドなアートピースをつくるには同社の生産能力は非常に限られている。実際、MB&Fは2024年に400本未満の時計しか製作しておらず、ブルガリ×MB&F セルペンティのムーブメントも、月に6~8個しか製造・組み立てられない。そのため、全99本が完成するまでには約1年かかる計算だ。しかも、すでにMB&Fはこの99本すべての買い手を見つけたらしい。それだけでもすごい話だ。何しろ、これが決して安い時計ではないことは言うまでもない。

もしこのブルガリ×MB&Fの新作が欲しいなら、すぐにでも小切手帳を用意したほうがいい。これは普通のデイリーウォッチではなく、まさに時計のアートピースだからだ。とはいえフェラーリを毎日の足に使う人がいるように、SSやチタンモデルなら14万8000ドル(日本円で約2250万円)、18KRGモデルなら17万ドル(日本円で約2580万円)を払って、この時計を日常的に楽しむ人もいるかもしれない。

この記事で名前を挙げたどのクルマと同じく、この時計も感心するし、うらやましく思うし、存在してくれてよかったとも思う。そして、実際に体験できてよかったとも思う。ただたとえ買えるとしても、どう使えばいいのか正直わからない。“Cars and Coffee”のミートアップにお気に入りの愛車で乗りつけるように、この時計は実用的に使うというより、時計仲間と楽しむためのものだろう。ほかのセルペンティよりも、まさにそういう目的でつくられた時計だと思う。そして何より、これは間違いなく自分向けにつくられたモデルだ。だからこそ、これが最後にならないことを願っている。

ブルガリ×MB&F セルペンティ。ケース幅39mm、厚さ18mm、ラグからラグまで53mm。18Kローズゴールド、グレード5チタン、ブラックPVDコーティングステンレススティールの3種類。30m防水。時・分表示はそれぞれRGがグリーン、チタンがブルー、PVDSSがレッドのドーム型ディスプレイ。14mmのフライングテンプ。裏蓋にはパワーリザーブインジケーター。手巻きムーブメント搭載、11時位置のリューズで巻き上げ、1時位置のリューズで時刻調整、約45時間パワーリザーブ。ベルクロ式の手縫いラバーストラップ。各素材33本限定、合計99本。価格はSS&チタンが14万8000ドル(日本円で約2250万円)、RGは17万ドル(日本円で約2580万円)。