今回の新作UR-150は時計としての革新性ももちろんすごいが。

新作UR-150を説明するには、“よりワイドなレトログラード表示”と表現するのが適しているかもしれない。ウルベルクの特徴であるサテライトディスプレイは通常120°の弧を描くが、このモデルでは240°に広がっている。では、これは何を意味するのか? まず、サテライトディスプレイ全般の仕組みを解説しよう。サテライトディスプレイは時計回りに進むが、時間が経過してもディスク自体が回転するわけではない。赤いフレームの先端には矢印が付いており、文字盤外周にあるミニッツトラックを指して時間を示す。そして分針が60分に近づくと、フレーム全体が勢いよく0に戻り、ディスクが進んで次の時間をフレーム内に表示する仕組みだ。

秒表示がないため、分目盛りを広く配置することで視認性が向上している(これはムーブメント自体の精度ではなく、読み取りの精度の話だ)。つまり、分表示がより読み取りやすくなっているのだ。時間の設定は12時位置のリューズで行うのだが、その操作は非常に触覚的な体験だ。リューズを操作するとムーブメント全体がゼロに戻るスナップを実際に感じ取れる。通常、12時位置にリューズを配置するのは扱いづらいものだが、リューズは大振りなサイズで操作性のバランスがよく、なおかつ邪魔にならない位置に収まっている点が秀逸だ。

この新作での主な功績は、新しいムーブメントが文字盤上の表示範囲を広げたこと自体ではなく、その実現方法にある。ここはウルベルクのフェリックス・バウムガルトナー(Felix Baumgartner)氏に説明を任せよう。

「すべてのサテライトを駆動し、時針を誘導し、各要素が正確なタイミングでジャンプするようにするために、新しいサテライトコンプリケーションシステムを設計しました。このシステムは、サテライトとベースムーブメントのあいだに配置されたフライングホイールとピニオンを中心に構築されています。これがカムの“ガイディングスレッド(動きを導く指針)”を読み取り、追従します。そのため従来のマルタ十字に基づく装置を、カムとラック(土台)システムに置き換えました。この新しい設計には非常に特殊なバネの開発が必要で、その製造は自社工房で独自に加工する必要がありました。この動きの躍動感をより視覚的に楽しめるようにするため、通常の60から0の目盛り間の距離を2倍に拡大しています」と、彼は語る。

より興味深いのは、視認性の向上が主目的ではなく、ムーブメントの技術的な成果を強調するという意図の副次的な効果だったという点だ。これらの動作はわずか100分の1秒と、一瞬で完了する。これについてサソリの一撃のようだとブランドは表現している。そしてカルーセルアームに取り付けられたウェイトは、これまでで最大のサイズを誇るだけでなく、このスナップ動作の力をバランスよく制御するために不可欠な要素となっている。

同ムーブメントは自動巻きだが、巻き上げの速度や使用時に発生する衝撃、さらにはムーブメントが動作する際の力を抑えるため、ブランドは二重のタービンシステムを採用している。そしてこのタービンが、衝撃を吸収する仕組みだ。とはいえ何よりも印象的だったのは、ムーブメントの裏側の見た目だ。文字盤側からも多くのメカニズムが見えるが、裏側から見えるローターのデザインはこれまで見たどの時計とも違う独特なものだった。

この時計は有機的なドーム型形状と横から見たときのプロファイルが特徴で、手首にフィットして快適に着用できる。ケースはサンドブラスト仕上げとショットブラスト仕上げが施されたチタンおよびスティールで構成され、ふたつの異なるモデルがそれぞれ異なるカラーで仕上げられている。どちらのモデルも50本の限定生産である。

昨年、シンガポールで両モデルを目にする機会があったが、撮影したのは下に掲載した“ダーク”モデルのみだ。このモデルはアンスラサイトカラーのPVD処理が施されたケースと赤いフレームの分針が特徴である。光の当たり具合によって、ダークのブラックアウトされたケースが少しグレーがかった印象を与えることもあるが、PVD加工のない“タイタン”モデルは、基本的にこのグレーの色味となっている。

下の写真だけ見ると時計があまり手首にフィットしていないように見えるかもしれないが、それはウルベルクが非常に長めのラバーストラップを標準で提供しているからだろう。おそらく、9インチ(約22cm)の手首サイズでも、箱から出したまま特に問題なく装着できるのではないだろうか。写真を撮っていないときに、ストラップを調整して7.25インチ(約18.4cm)の自分の手首にしっかりフィットさせてみたところ、ぴったりと手首に沿った。実際、これまで着用したウルベルクのなかで最も快適だったかもしれない。

新作UR-150 “スコーピオン”の価格は、PVD加工のない“タイタン”モデルが8万8000スイスフラン(日本円で約1500万円)、先述した“ダーク”モデルが8万9000スイスフラン(日本円で約1530万円)となっている。決してお得とは言えない価格だが、ウルベルクへの愛着とブラックアウトされたデザインへの偏愛を考えると、この時計がウルベルクらしい非常にクールな一品であることは間違いない。

人気の桜ダイヤルをクリーミーな色合いに仕上げた、新作のSBGH368である。

2023年、グランドセイコーは手巻きスプリングドライブのCal.9R31を搭載した100本限定のSBGY026を発表した。そして今回、62GSケースに18KRGを採用した初のレギュラーモデルが登場。クラシックなデザインを継承しつつ、より力強く存在感のあるケースデザインとなっている。

ムーブメントには約55時間のパワーリザーブを備える自動巻きのCal.9S85、通称“ハイビート36000”を搭載。ケースサイズは38mm×12.9mmで、シースルーバック仕様ながら100mの防水性能も確保している。ドレスウォッチとしては少しタフすぎるかもしれないが、個人的にはむしろうれしいポイントだ。

グランドセイコー SBGH368は、4月1日より発売を予定しており、希望小売価格は440万円(税込)だ。

昨年日本を訪れた際にこの時計のプレビューを見る機会があり、その素晴らしさに圧倒された。確かに、手巻きムーブメントでデイト表示のないSBGY026のほうが好みかもしれないが、RGと淡いクリームピンクのダイヤルの組み合わせは、間違いなく最高クラスの美しさだった。62GSケースは一般的なドレスウォッチよりも少し大胆なデザインではある(正直、“ドレスウォッチ”と断言すると議論が起きそうで少し怖い)。とはいえ、これが人生最後のゴールドウォッチになるかもしれないと思えるような1本であることは間違いない。

SBGH368
基本情報
ブランド: グランドセイコー(Grand Seiko)
モデル名: ヘリテージコレクション メカニカルハイビート 36000 桜隠し(Heritage CollectionMechanical Hi-Beat 36000 sakura-kakushi)
型番: SBGH368

直径: 38mm(ラグ・トゥ・ラグは44.7mm)
厚さ: 12.9mm
ケース素材: 18Kローズゴールド
文字盤: カッパーピンク
インデックス: 18KRG製アプライド
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: クロコダイルレザーストラップ、3つ折りクラスプ付き

SBGH368
ムーブメント情報
キャリバー: 9S85
機能: 時・分表示、センターセコンド、日付表示
パワーリザーブ: 約55時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: ハイビートの3万6000振動/時
石数: 37
クロノメーター: なし、ただし日差+5~-3秒
追加情報: 耐磁4800A/m

価格 & 発売時期
価格: 440万円(税込))
発売時期: 2025年4月1日発売予定
限定: なし

ブルガリ×MB&Fが再びコラボレーションし!

史上最も未来的な“セルペンティ”が誕生!

“アイコン”という言葉は時計の世界でよく使われるが、ときとして乱用されすぎている感もある。しかしブルガリのセルペンティなら、本物のアイコンと呼ぶにふさわしい。蛇の頭を模したデザインが特徴のこのシリーズは、まさに唯一無二の存在だ。手首にぐるりと巻きつくセルペンティ トゥボガスは、1周、2周、あるいは何重にも巻くことができるカフスタイルで、今もっとも注目されている“イット(ホットな)”ウォッチのひとつ。一方セルペンティ セドゥットーリは、同じデザインの流れをくみつつ、よりクラシックなブレスレットウォッチとして仕上げられている。そしてセルペンティの極みともいえるのがセルペンティ ミステリオーシ。蛇の頭のなかに時計が隠されたこのモデルは、世界最高峰のジェムセッティングや漆芸、ジュエリー技法が惜しみなく施された、まさに芸術品のようなアイテムだ。
ただしこれまでになかったものがある…少なくとも、ブルガリ オルロジュリーのプロダクト・クリエイション・エグゼクティブ・ディレクター、ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ(Fabrizio Buonamassa Stigliani)氏の目には。それは大胆でマスキュリンなセルペンティで、もっと幅広い人たちの手元にこのアイコンを届けるモデルだ。そしてそれが今日ついに登場する。ブルガリと未来的なウォッチメイキングで知られるMB&F​が2度目のコラボレーションを果たし、シンプルに“セルペンティ”と名付けた新作を発表。ただその名前とは裏腹に、これまでのセルペンティとはまったく異なる、新しいスタイルの時計となった。

マックス・ブッサー(Max Büsser)氏とファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏。Photo courtesy MB&F and Bulgari.

LVMHでファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏とマクシミリアン・ブッサー(Maximilian Büsser)氏のコラボの噂を聞いたとき、とてもワクワクした。この業界でも特に好きなふたりで、時計そのものはもちろんだがそれ以上に彼らの個性や視点がおもしろい。ただし前回のレガシー・マシン フライング T アレグラは、ブルガリのハイジュエリーの魅力を最大限に生かした作品だった。だからこそ新しいコラボの話が出たときは、まだセルペンティという名前すら聞く前から、“今回はもう少し自分向きの時計になるかも?”と期待していた(まあその“自分”になるには、もっと深い懐が必要なのは間違いない)。

ジェンダーウォッチの話はひとまず置いておいて、これまでのセルペンティが主に女性向けにデザインされ、愛されてきたのは間違いない。セルペンティのデザインは基本的に蛇のビジュアルにフォーカスしていて、ブルガリはこれを“永遠の再生と大胆なメタモルフォーゼの象徴”と呼んでいる。だが今やその枠を超えて進化してきた。ではブルガリ×MB&Fのセルペンティはどんな形になるのか? スタイリッシュなブレスレット? カフ? それとも鱗や舌がついている? さすがにそこまで振り切ってはいないものの、それでもしっかりMB&Fらしさが詰まった仕上がりになっている。

MB&Fが好きなら、この時計のベースがどこから来ているかすぐにピンとくるはず。ファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ氏のアイデアのヒントになったのは、2020年に発表されたMB&FのHM10 “ブルドッグ”だ。HM10はドーム型のディスプレイをふたつ備えていて、左が時、右が分を表示。その丸みを帯びたヘッドデザインが、まるで目のように見えるというユニークなスタイルだった。

ブルドッグはどちらかというとカエルっぽい気がする(ちなみに“ranine”がカエルっぽいという意味なのはもちろん調べた)。カエルは両生類であり蛇みたいな爬虫類とは違うが、進化的な距離ほどにはイメージの飛躍は必要なかった。そんなことを考えつつ、ボナマッサ・スティリアーニ氏はすぐにスケッチを始めて、もっと蛇らしいデザインを探し始めた。

個人的に気に入っているのは、ボナマッサ・スティリアーニ氏が“コブラ”と名付けたセルペンティの初期スケッチのひとつ。目にあたる部分はシャープなスリット状になっていて、全体的に直線的なデザインだ。そしてスケール(鱗)パターンを施したラバーストラップが採用されていた。ストラップ部分は少し安っぽく見えたり、実際のつけ心地も微妙だったかもしれないが、セルペンティ トゥボガスの巻きつくブレスレットのアイデアをうまく取り入れていたのはおもしろい。このデザインを、過度につくり込みすぎたりより多くの人(特にジュエリー系のデザインに挑戦しづらい男性)にとって“つけにくい”ものにせずに仕上げる方法は、正直なかなか思い浮かばない。しかしプレス資料やプレゼンに含まれていたスケッチを見ると、実際にどんな方向性が検討されていたのかが垣間見えて、とても興味深かった。とはいえ最終的に完成したモデルも素晴らしい仕上がりになっている。

ブルガリ×MB&Fのセルペンティはまるでクルマのように、見る角度によって印象が変わる時計だ。それに加えてケースの素材によっても表情が大きく変わる。今回用意されたのは、18Kローズゴールド、グレード5のポリッシュ仕上げチタン、そしてブラックPVDコーティングのステンレススティールの3種類。デザインの流れも独特で、“後部(通常の時計で言えば12時位置)”からアーチを描くラインが、セルペンティの“鼻先”に向かってスッと細くなっていく。上から見ると蛇っぽさに気づきにくいかもしれないが、真正面から“鼻先”を見つめると、その特徴的なフォルムがはっきりと現れる。

個人的に、このデザインの効果が最も際立っているのは18KRGケースだと思う。エッジ部分が光と影を拾いコントラストを生み出すことで、セルペンティのフォルムをより強調している。このケースではグリーンのアクセントが使われており、時・分を表示するドーム部分もグリーンで統一されている。中央部分には、“脳”に見立てられた巨大な14mmのフライングテンプが浮かぶように配置され、ダブルネームのブリッジに支えられている。この独特な構造が、時計のデザインをより未来的でダイナミックなものにしている。

また上から見たときに注目したいのが、ラグのように機能するふたつのリューズ。左側のリューズは11時位置にあり、手巻き用。右側のリューズは1時位置に配置され時刻調整に使われる。この配置が時計のデザインと機能性を絶妙に融合させている。

先に言っておくと、この時計は決して小さくない。まあ、MB&Fの時計が小振りなことなんてほとんどないが、横39mm、縦53mmというやや掴みどころのないサイズ感に加えて、厚さ18mmとなると、正直“つけるのは不可能では?”と思ってしまう。ところが実物を初めて見たとき、一緒にいたベン(・クライマー)が真っ先に口にしたのは“意外とウェアラブルだ”という言葉だった(ベタな表現で恐縮だが本当にそうだった)。

蛇は、別にあったかくてフレンドリーな生き物ではないが、この新しいセルペンティはとにかく凶悪な雰囲気をまとっている。特に鼻先の鋭いデザインがそれを強調している。ただブッサー氏とボナマッサ・スティリアーニ氏は、あえて角ばった形ではなく、より自然なスローピングデザインに仕上げた。このふたりはクルマ好きとしても知られていて、これまでも自動車デザインを取り入れたことがある。ボナマッサ・スティリアーニ氏とは、写真やミッレ・ミリアの話で盛り上がったことがあるが、そんな背景を考えれば今回のデザインでもクルマ的な要素が取り入れられているのはまったく驚きではない。

時計の背面には、スポーツカーのリアウィンドウを思わせる段差のあるサファイアクリスタルを採用。リューズは、まるでクルマのホイールのような形状をしており、その下に配置されたふたつのパーツはV12エンジンのバルブカバーにも見える。全体のデザインは、テスタロッサやランボルギーニ・カウンタックのような直線的でアグレッシブなものではなく、フェラーリ330 P4やディーノ246 GTのような流麗なフォルムに近い。このたとえで言えば、むしろ大歓迎だ。

この時計には、5枚の反射防止コーティングが施されたサファイアクリスタルが使われている。2枚は目にあたり、1枚は脳、もう1枚はエンジンに相当する部分だ。そして5枚目は、いわばムーブメントの“アンダーキャリッジ(足回り)”、つまりこの獣”の腹部にあたる部分に配置されている。そこから覗くムーブメントは、精巧に仕上げられたオープンワークデザインになっており、大きく開いたスペースから歯車の動きを楽しむことができる。手仕上げの美しさが際立つ構造で、さらにパワーリザーブインジケーターも搭載されている。

本作は手巻きムーブメントを搭載しているが、正直なところ単なる時計というよりも、まるで機械仕掛けのアート作品のように感じる。実際これほど時間を合わせなくてもいい、と思えた時計は初めてかもしれない。重要なのは時間を知ることよりも、これを身につけるという体験そのものなのだ。

まだ触れていなかったが、この時計のなかで最も控えめながらも、実はかなりおもしろいディテールがある。それはセルペンティの鼻先に最も近い部分にあるラグだ。これは実は蛇の牙を模している。厳密に言えば、爬虫類学的にはソレノグリフ型の牙にあたる。これは、長くてなかが空洞になっていて(完全にそうではないが)、動かせる構造を持つのが特徴だ。見た目のアクセントになっているだけでなく装着感にも貢献しており、手縫いのラバーストラップとベルクロの組み合わせによって、手首にしっかりフィットするデザインになっている。

ブラックコーティングの時計は本当に好きだ。3種類のセルペンティのなかで一番“危険な香り”がするのは、間違いなくブラックPVDコーティングを施したSSモデルだと思う。ヴィンテージウォッチのようにPVDが少しずつ剥がれて味が出るのか気になるところだが、最近の技術を考えると、そこまで劇的なエイジングは期待できなさそうだ。だが個人的にちょっと引っかかったのは赤い目。ここまで攻めたデザインだと、さすがに少しやりすぎかなとも思う。それにボディの流れるようなラインや口の形の存在感が、ほかのモデルほど際立たない気がする。

個人的に気に入ったのは、チタンと18KRGのモデルだ。それぞれ33本の限定生産で、SSモデルを含めると合計99本。ブルガリとMB&Fのあいだで振り分けられることになるが、49本目の時計をどちらが手にするのか少し気になる。今回の時計はMB&Fが製造を担当していて、こうしたハイエンドなアートピースをつくるには同社の生産能力は非常に限られている。実際、MB&Fは2024年に400本未満の時計しか製作しておらず、ブルガリ×MB&F セルペンティのムーブメントも、月に6~8個しか製造・組み立てられない。そのため、全99本が完成するまでには約1年かかる計算だ。しかも、すでにMB&Fはこの99本すべての買い手を見つけたらしい。それだけでもすごい話だ。何しろ、これが決して安い時計ではないことは言うまでもない。

もしこのブルガリ×MB&Fの新作が欲しいなら、すぐにでも小切手帳を用意したほうがいい。これは普通のデイリーウォッチではなく、まさに時計のアートピースだからだ。とはいえフェラーリを毎日の足に使う人がいるように、SSやチタンモデルなら14万8000ドル(日本円で約2250万円)、18KRGモデルなら17万ドル(日本円で約2580万円)を払って、この時計を日常的に楽しむ人もいるかもしれない。

この記事で名前を挙げたどのクルマと同じく、この時計も感心するし、うらやましく思うし、存在してくれてよかったとも思う。そして、実際に体験できてよかったとも思う。ただたとえ買えるとしても、どう使えばいいのか正直わからない。“Cars and Coffee”のミートアップにお気に入りの愛車で乗りつけるように、この時計は実用的に使うというより、時計仲間と楽しむためのものだろう。ほかのセルペンティよりも、まさにそういう目的でつくられた時計だと思う。そして何より、これは間違いなく自分向けにつくられたモデルだ。だからこそ、これが最後にならないことを願っている。

ブルガリ×MB&F セルペンティ。ケース幅39mm、厚さ18mm、ラグからラグまで53mm。18Kローズゴールド、グレード5チタン、ブラックPVDコーティングステンレススティールの3種類。30m防水。時・分表示はそれぞれRGがグリーン、チタンがブルー、PVDSSがレッドのドーム型ディスプレイ。14mmのフライングテンプ。裏蓋にはパワーリザーブインジケーター。手巻きムーブメント搭載、11時位置のリューズで巻き上げ、1時位置のリューズで時刻調整、約45時間パワーリザーブ。ベルクロ式の手縫いラバーストラップ。各素材33本限定、合計99本。価格はSS&チタンが14万8000ドル(日本円で約2250万円)、RGは17万ドル(日本円で約2580万円)。

シチズンのアナデジ・スポーツウォッチに、最新世代が登場。

2024年の夏、シチズンはエコ・ドライブを搭載したプロマスター ランドシリーズの次世代機を発表した。新たに開発されたアナデジムーブメントを搭載し、ブランドが得意とするモダンで複雑、かつ機能性を重視したデザインを採用したモデルである。この新作はシチズンが長年培ってきたクォーツウォッチの分野、とりわけ小型のデジタル液晶を備えたモデルの系譜をさらに発展させるものだ。こうした時計の世界観は個人的にも大好きで、スマートウォッチではなく、機械式やデジタルの融合によって多機能を実現する時計を求めている人にとって魅力的な選択肢となるだろう。

Citizen promaster Land U822
パネライスーパーコピー代引きそして先週、マークが現在販売されているなかでも特にお気に入りの時計のひとつ、シチズン アクアランド JP2007の実機レビューを公開した。1980年代に誕生したこのモデルは、プロフェッショナルなダイビングツールとしての本格的な機能を備えている。ケースから突き出た深度センサーや、小さなデジタル液晶用の切り抜き窓が施された高輝度な夜光ダイヤルが特徴的だ。この時計は個人的にも愛用しており、数年前から手元に置いているがその魅力は尽きない。数値上のスペックよりもはるかに快適な装着感を持ち、ベゼルの優れた操作性、デジタル液晶を活用した多彩な機能、そして明るい夜光ダイヤルが備わっている。いわば“日本版プロプロフ”とも言える存在で、たびたびおすすめしているのだが、ダイバーズウォッチとしての個性が強いため万人向けではないことも承知している。
null【VS工場出品】OFFICINE PANERAI パネライ スーパーコピー ルミノール サブマーシブル GMT カーボテック? ネイビーシールズ PAM01324  44mm
しかしシチズンのラインナップは多岐にわたる。そのため、より一般的なモデルを求める人も安心して欲しい。これまでに僕はより控えめなプロマスター セイルホークや、ユニークなプロマスター SST、さらには名作ブルーエンジェルス スカイホークを所有してきた(免税店で見かけたことがある人も多いのではないだろうか)。いずれのモデルも、デジタル液晶をアクセントに持つスポーツウォッチとして非常に優れた性能を誇る。そして今回新ムーブメントを搭載したプロマスター ランド U822が登場、この実直で愛すべきコンセプトを次世代に向けて進化させることとなった。

Citizen promaster Land U822
時計全体の説明に入る前に、まずはムーブメントについて詳しく見ていこう。Cal.U822はクォーツ制御のソーラー駆動ムーブメントで、Memory-in-Pixel(MIPS)ディスプレイを採用している。このディスプレイは120×48pxの高解像度を実現しており、従来のLCDスタイルのディスプレイと比較してより高いコントラストと鮮明な表示を可能にしている。

このムーブメントにはワールドタイム、クロノグラフ、アラーム、パーペチュアルカレンダーといった一般的な機能に加え、バックライトや光量インジケーターといった特別な機能が搭載されている。光量インジケーターは、光源が時計の充電にどれほど効果的かを測定できるだけでなく、過去1週間の発電履歴も記録する。またCal.U822の精度は月差±15秒とされ、フル充電時には省電力モードで最大3年間動作する。

Citizen promaster Land U822
時計全体に視点を広げると、このプロマスター ランドの新モデルはプロマスター誕生35周年を記念して2024年に登場しており、3種のバリエーションが用意されている。ここで紹介するのは、スティール×ブラックケースにポリウレタンストラップを組み合わせたJV1007-07Eだ。このほかには、グリーンダイヤルとグレーケースのJV1005-02W、そして5900本限定のJV1008-63Eがある。限定モデルはグレーIPコーティングが施され、スティールブレスレットと、ベゼルインサートおよびダイヤルにカモフラージュパターンを採用している。

外観の違いを除けば3モデルとも基本スペックは共通で、ケース径44mm、厚さ14.5mm、ラグ・トゥ・ラグは51.4mmとなる。ラグ幅は22mmで、ストラップ装着時の重量は107g、そして防水性能は200mだ。またプッシャーはねじ込み式のように見えるが、実際にはリューズと同様にパッシブなロック機構が採用されており、防水性能を確保するためにリューズやプッシャーを操作する必要はないので安心して欲しい。

Citizen promaster Land U822
もし僕と同じようにこの種の時計に魅力を感じるのであれば、スペックや技術はアナデジフォーマットの時計、特にシチズンのモデルに共通するものが多いことに気づくだろう。それは確かにそのとおりだ。ただし新しいディスプレイを除けばの話である。MIPSディスプレイは、現行のアクアランドやスカイホークに搭載されているものよりも、はるかにモダンな使用感を提供する。従来のLCDディスプレイはシンプルで、省電力性に優れ、コントラストが高く、数字をクリアに表示できるというメリットがある。しかし表示できる情報の柔軟性は低く、細かいディテールの描画にも限界があった

MIPSディスプレイではセグメントではなくピクセルで構成されているため、より高解像度な表示が可能であり、さらに変化のあるピクセル部分だけを更新することで電力消費を抑えることができる。また画面のリフレッシュ速度が速く、標準モード(白背景に黒文字)とネガティブモード(黒背景に白文字)の切り替えも可能だ。
【SBF工場出品】OFFICINE PANERAI パネライ スーパーコピー サブマーシブル クアランタクアトロ PMA01287 44mm
画面のモード切替中の状態を示すこのリストショットでは、ディスプレイが反転し、黒文字が白背景に表示されている様子が確認できる。

シチズンはこの特性を生かし、ユーザーインターフェースを最適化している。通常の待機状態では、メインのリューズを押し込むことで画面が白黒から黒白へと反転する。さらにプッシャーを使って「カレンダー」、「ワールドタイム」、「クロノグラフ」、「タイマー」、「アラーム」、「設定」といった各機能を順番に切り替えられる。新しい機能を選択する際には再びリューズを押し込むことで決定し、画面表示は再び白背景に黒文字へと戻る。特定のモードが選択された状態では、2時位置のリューズを回すことで異なる表示オプションを切り替えられる。たとえば、ワールドタイムでは「第2時間帯の時刻のみ表示」、「ふたつの時間帯と日付を並べて表示」、「第2時間帯の拡張時刻・日付表示」などを選択可能だ。

どの待機状態(つまり、画面が黒背景に白文字表示されている状態)でも、4時位置のプッシャーを押せばスクリーンのバックライトが点灯する。このバックライトはディスプレイの上部に配置された赤みがかったオレンジ色のLEDを使用しており、暗所でも容易に視認できる。電子バックライトと、ダイヤルに施された驚異的な夜光塗料の組み合わせによる発光量はまさに圧巻だ。個人的にはインディグロのような全面発光のバックライトを望みたいところだが、このシステムでも十分に実用的で視認性の高い小型ディスプレイのメリットを最大限に生かしている。完全にデジタル表示に移行したくない、あるいはスマートウォッチには踏み切れないアナデジ好きにとって、この新しいスクリーンの導入はアナデジフォーマットの進化として意義のあるものだと感じる。

夜光は2種類。

また、Cal.U822にはちょっとした隠し機能も搭載されている。たとえば両方のプッシャーを同時に押すことで、メインの針が表示しているタイムゾーンを即座に切り替えることができる。また設定メニュー内には、針の位置がずれた場合に素早く簡単に再同期できる機能も備わっている。

興味深い点、あるいは少し不便に感じるかもしれない点として、クロノグラフ作動中には画面に計測時間が表示されないことが挙げられる。クロノグラフを開始すると“Running(作動中)”とだけ表示され、計測を停止するまでは具体的な経過時間を見ることができない(または、4時位置のプッシャーを押してスプリットタイムを記録した場合、その時点の時間が表示される)。個人的には、この仕様のためにクロノグラフを頻繁に使うことはなさそうだ。デジタル時計のクロノグラフ機能を使う主な理由は、計測中の経過時間をすぐに確認できることだからだ。しかしクロノグラフ機能を除けば、Cal.U822のユーザーインターフェースは非常に洗練されており、特にトラベルウォッチとしての実用性に優れている。GMT/ワールドタイム機能はわかりやすく整理されており、どのタイムゾーンの時刻も設定メニューから簡単に調整できる。また気になる人のために補足すると、メインの設定や各機能の時刻・日付・ロケーション設定に入ると時針と分針が素早く9時14分の位置に移動し、ディスプレイが見やすくなるよう配慮されている。

ムーブメントと小型ディスプレイ以外の要素に目を向けると、全体としては現代的なパイロットウォッチのデザインを踏襲している。太めのソード針、視認性の高い夜光インデックス、そして文字盤右側に現在のモードを表示するインダイヤル、左側にはクロノグラフの分計とパワーリザーブインジケーターが配置されている。

最後になるが、まだ触れられていないふたつの要素に気づいている人も多いであろう。それがダイヤルを囲むコンパスベゼルと、8時位置にあるタービンのようなデザインのリューズだ。このリューズはベゼルを回転させるためのもので、太陽の位置を基にした簡易的なナビゲーションが可能となる。普段なら「コンパスベゼルは実用性が低いし、もっと便利な方法がある」と言いたくなるところだが、プロマスター ランド U822はディスプレイ上でさまざまなナビゲーション機能を補完しており、さらにプロマスター ランドというカテゴリーに属していることを考えると、このコンパスベゼルはデザインの一環としても違和感なく馴染んでいる。

時計の細部や機能について多くの言葉を費やしてきたが、最後は実際の装着感について触れて締めくくろう。寸法(44×14.5×51.4mm)から想像がつくように、プロマスター ランド U822は決して小型の時計ではない。装着感は数値どおりで、特にラグ・トゥ・ラグのサイズは僕の7インチ(約17.8cm)の手首には許容範囲ギリギリといえる。ラグは手首に沿うように下向きに傾斜しており、時計のバランスを保つのに役立っているものの、やはりがっしりとしたスティールのケースを持つため、シャツのカフの下に収まるようなタイプではない。しかし数値だけでは測れないこともある。シチズンのいい点のひとつは、ほとんどのショッピングモールに店舗があり、実際に手に取って試着できることだろう。

ポリウレタン製のラバーストラップは快適で柔らかく、厚みもほどよい。このような要素が組み合わさり、極めて“マニア的”なアナデジウォッチでありながらスポーティでマスキュリンな印象を持つデザインが完成している。正直なところ、シチズンにはこのコンセプトを40mm径前後のサイズで展開してほしいと切に願っている。またダイヤルのインジケーターを減らし、ディスプレイに情報を集約することで、さらにすっきりとしたデザインになるのではないかとも思う。今後な話をするならば、このU822ムーブメントをほかのモデルにも搭載して欲しい。ダイバーズウォッチ、トラベルウォッチ、レーシングクロノグラフ、シンプルなフィールドウォッチなど、さまざまなスタイルに応用できる可能性を感じる。

アナデジのスタイルは万人向けではないが、小型ディスプレイに魅了された者にとって、この新しいディスプレイとムーブメントの視認性のよさは無視できないほどの魅力がある。僕としては、このムーブメントがどんな時計に搭載されるのかを想像するだけで胸が高鳴る。例えば、次世代のアクアランドに搭載されるとしたら……どうだろう?

ロレックス ランドドゥエラー、Cal.7135を搭載。ムーブメント技術における大きな飛躍。

ロレックス ランドドゥエラーが本当に登場したのだ。近年のロレックスにおける最も意義深いリリースのひとつと言えるかもしれない。スイス屈指のブランドが誇る製造技術と工業的な専門性を明確に示すこのモデルは、ヴィンテージデザインの要素を取り入れながらも、最大の特徴はダイナパルス エスケープメントにある。この脱進機は、ロレックスが独自に開発・特許を取得し、工業的に最適化したダイレクトインパルス型の脱進機であり、デュアル・シリコンホイールを採用。搭載されるCal.7135は、ロレックスとしては初となる機械式高振動ムーブメントである。ケースは新設計のスティール製で、1970年代のRef.1530やオイスタークォーツモデルを想起させるが、デイトジャストと比べて20%も薄型だ。このモデルによりロレックスは、一体型ブレスレットを備えたスポーツウォッチの分野へと再び本格的に参入し、数々の技術的“初”を実現したムーブメントによって、高精度を追求する歩みをさらに前進させたのである。

ロレックススーパーコピーn級 買ってみたが特許を出願したり商標登録を申請したりするたびに、ネットの一角はざわつき始める。2023年7月28日、ランドドゥエラー(そしてコーストドゥエラー)という名称がロレックスUSAによって商標登録された。その直後、時計好きたちがSNSでこの情報を拡散。投稿にリール、ショート動画、TikTokなど、あらゆる形で話題が広がり、絵文字も飛び交った。だが数日もすれば熱は冷め、話は自然と立ち消えに。そして今日、ロレックスはあの2023年夏の静かな商標登録をついに現実のものとしたのである。

ヴィンテージロレックスに目がない人なら、このケース形状と一体型ブレスレットにはきっと見覚えがあるはずだ。通称オイスタークォーツデザインと呼ばれるこのスタイルは、1975年に登場した機械式デイトジャスト、Ref.1530で初めて採用された。まさに今から50年前のことだ。その後、1977年にオイスタークォーツの後継モデルとしてRef.17000(デイトジャスト)と19018(デイデイト)が登場し、このデザインが広く知られるようになった。それゆえ“オイスタークォーツ”の名が定着したというわけだ。

ロレックス デイトジャスト Ref.1530(1975年)

ロレックス デイトジャスト オイスタークォーツ Ref.17013(1977年)

2025年の新作ランドドゥエラーは、誕生から50年を迎えたRef.1530のケースデザインを、わずかにプロポーションを調整しながら復活させたモデルである。ケース径は36mmまたは40mm、厚さは9.7mmで、スタンダードなデイトジャスト41と比べて2.3mmも薄型となっている。 多くのヴィンテージモデルに見られる特徴的な5列のフラットジュビリーブレスレットも、ランドドゥエラーのためにアップデートされた。なかでも注目すべきは、クラウンクラスプの採用だ。これはロレックスが隠しクラスプと呼ぶ仕様で、王冠型の引き手が特徴となっており、2018年以降のデイトジャスト36および41 ジュビリーブレスレットでは採用されていないディテールである。 ケース素材のバリエーションとしては、ホワイトゴールドのフルーテッドベゼルを備えたスティールモデル、バゲットダイヤ付きまたはなしのエバーローズゴールドモデル、そして同じくバゲットダイヤの有無を選べるプラチナモデルがラインナップされている。

ダイヤルに目を向けると、ランドドゥエラーは既存のロレックス各モデルの要素を組み合わせたデザインとなっており、全体としてはデイトジャストを思わせる雰囲気を持っている。ただし、そこに新たなハニカムモチーフの装飾が施されており、エクスプローラーコレクションを彷彿とさせるアプライドの方位インデックスも採用。また、日付を拡大表示するサイクロップレンズもクリスタル上に備えられている。

裏蓋にはシースルーバックが採用されている。その理由は、これから明らかになる。

ロレックス ダイナパルス エスケープメント
ランドドゥエラーには、ロレックスが新たに開発し特許を取得したダイレクトインパルス型の脱進機が搭載されており、これをダイナパルス エスケープメントと名付けている。この脱進機のアイデア自体は18世紀中頃から後半、ピエール・ル・ロワやジョン・アーノルド、トーマス・アーンショウといった時計師たちによって生まれたもので、その後も数多くの名匠たちの手で改良が重ねられてきた。そして今、ロレックスはこの何世紀にもわたる歴史を持ち、理論的には優れているとされる脱進機構に独自のアプローチを加え、現代的な解釈として完成させたのである。

スイスレバー脱進機

実際のところ、現在の時計においてはレバー脱進機が主流である。機械式時計を持っているなら、その多くがこのレバー方式を採用していると考えて間違いない。セイコー5から、これまでに作られたすべてのロレックスに至るまで例外ではない。ロレックスは2015年に、独自開発のレバー脱進機であるクロナジー エスケープメントを発表している。クロナジーのように幾何学的に最適化された設計であっても、レバー脱進機には構造上避けられない弱点がいくつか存在する。なかでも最大の問題は、レバーが本質的に持つ摩擦であり、それゆえに潤滑が必要になる点だ。実際にレバー脱進機の動作を観察すると、ガンギ車の歯とルビー製のパレットとのあいだに摩擦が生じているのが一目瞭然である。歯が石の上を擦っているのだ。2万8800振動/時(4Hz)の時計では、この接触が1秒間に8回、年間で2億5228万8000回も発生する。この摩擦を抑えるためにオイルが使われており、だからこそ数年ごとにオーバーホールが必要になるのである。

ロレックス クロナジー エスケープメント

ダイレクトインパルス エスケープメントには、こうした“擦れる”動きが一切ない。というのも、動力、つまりインパルスが、名前のとおりガンギ車からテンプへ直接伝達されるからである。この構造により、オーバーホールの間隔が長くなるだけでなく、レバー脱進機と比べて効率が高く、経時的にも安定した歩度が得られる。つまり、より高精度な時計を実現できるというわけだ。 なお、ナチュラル脱進機、デテント(またはクロノメーター)脱進機、コーアクシャル脱進機などは、いずれもダイレクトインパルス型の脱進機に分類される。

では、もしこのタイプの脱進機が技術的に優れているのであれば、なぜすべての時計に使われていないのか? その答えはシンプルで、完璧なものは存在しないということ。時計づくりにおいても、それは例外ではなく、ダイレクトインパルス エスケープメントも決して万能ではない。この脱進機が腕時計に採用されにくい最大の理由は、耐衝撃性の低さにある。レバー脱進機におけるレバー=パレットフォークのような構造に依存しないため、ガンギ車がアンロック(脱調)しやすいという欠点があるのだ。アンロックとは、外部からの衝撃などでガンギ車が本来のタイミングからズレてしまう状態のこと。レバー脱進機の場合、ガンギ車は常にパレットフォークと噛み合っており、完全に自由になる瞬間がない。一方、ダイレクトインパルス エスケープメントでは、サイクル中のごくわずかなあいだだけガンギ車が“フリー”の状態になる。この瞬間に衝撃が加われば…はい、アウト。時計は故障するというわけだ。

オメガ コーアクシャル 脱進機(1999年)

こうしたダイレクトインパルス エスケープメントが技術的課題を克服してきた例も、過去には存在する。ただしその多くは、最初は極めて小規模かつ手作業による製造で実現され、その後に量産体制向けに改良されてきた。この代表的な例が、ジョージ・ダニエルズが発明し、オメガが広めたコーアクシャル エスケープメントである。ダニエルズはこの機構を1974年に特許取得し、その後25年以上にわたって完成度を高め、1999年にオメガが量産化。その際に使われたのが、ETA 2892をベースに改良されたCal.2500だった。ダニエルズ版(現在もロジャー・スミスが使用)はふたつのガンギ車を備える設計だが、オメガは量産化に向けて設計を変更し、ひとつのガンギ車で構成される方式に仕立てた。コーアクシャル エスケープメントは、レバー脱進機とデテント脱進機の長所を融合させた構造ともいえ、ダイレクトインパルス型脱進機の成功例として広く知られている。

ユリス・ナルダン フリーク(2001年) ダイレクトインパルス エスケープメント搭載

ユリス・ナルダンが2001年に発表したフリークは、もっとも現代的なダイレクトインパルス エスケープメントを搭載したモデルとして知られている。同一平面上に並列配置されたふたつのシリコン製ガンギ車を用いた構造は、今回ロレックスが採用したものと非常に近いアーキテクチャを持っている。 このフリークによって、時計業界はロレックスのダイナパルス エスケープメントに通じる方向性へと一歩踏み出すことになったが、ひとつ注目すべき点がある。それは、このダイレクトインパルス型のフリークはこれまでに数千本しか生産されておらず、近年ではユリス・ナルダンもこの特定の脱進機から距離を置きつつあるということだ。

現代におけるもうひとつの脱進機の進化として挙げられるのが、ジラール・ペルゴのコンスタント エスケープメントである。2013年に発表されたこの機構は、中間機構であるシリコン製のブレードによって実現された真のコンスタントフォース機構である。興味深いのは、この発想の原点がロレックスにあったという点だ。1997年、当時ロレックスに在籍していたニコラ・デオンが、フレキシブルなブレードでテンプに一定のエネルギーを供給するアイデアを追求していたのである。このプロジェクトは社内で“Project E.L.F.”というコードネームで呼ばれていた。2002年にデオンはジラール・ペルゴへと移籍し、そこでこのコンセプトがついに実現されることとなった。つまり、ロレックスは1990年代後半の時点で、すでにシリコン素材を用いた先進的な実験を行っていた可能性があるのだ。

ジラール・ペルゴ コンスタント エスケープメント(2013年)

卓越した自社一貫製造体制、そして他に類を見ない研究開発予算を誇るロレックスは、ダイレクトインパルス エスケープメントの課題をまったく異なるアプローチで解決したように見える。しかも、いきなり工業的な量産レベルでそれを成し遂げたのである。

コーアクシャルのように、これまでの多くのダイレクトインパルス エスケープメントの試みがデテント脱進機から着想を得てきたのに対し、ロレックスは自社のシリコン部品製造技術と長年の研究成果を結集し、ナチュラル エスケープメントを進化させるかたちで、まったく新しい脱進機構を生み出した。複雑なパレットフォーク機構に頼るのではなく、ふたつの平面上に配置されたガンギ車が、正確に噛み合いながら効率よくロックするという構造を、数式レベルで完成させたのだ。ロレックスはその精緻な理論と製造力によって、脱進機の設計に新たな地平を切り拓いたのである。

ロレックス ダイナパルス エスケープメント(2025年))

ロレックスは、DRIE(深反応性イオンエッチング)技術を用いてガンギ車をシリコンで製造することで、量産においても常に最適かつ同一形状を実現している。大きめのロック用の歯はレバーと噛み合い、それ以外の標準的な形状の歯は常にふたつのガンギ車同士を噛み合わせておくために使われる。 この噛み合わせによって、ガンギ車同士が互いにロックし合い、衝撃に対する耐性が生まれる。しかも、すべての歯がまったく同じ形状であることから、製造面でも大きな利点がある。 このようにして実現されたロレックスのダイナパルス エスケープメントは、予想をはるかに超える耐久性と工業的スケーラビリティ、そしてコンパクトなサイズを兼ね備えている。 搭載される新キャリバー7135は、まさに機械工学の結晶ともいえる存在だ。新たなダイレクトインパルス エスケープメントを、初めから工業レベルで量産化する。そんな芸当ができるのは、ロレックス以外にない。

ダイナパルス エスケープメントは、1789年にアブラアン-ルイ・ブレゲが発明したナチュラル エスケープメントに着想を得ているものの、技術的にはまったく異なる構造である。 見た目こそナチュラル エスケープメントに似ているが、ロレックスのふたつのガンギ車は機能面で非対称に設計されている。ふたつのうち一方だけが、テンプの半振動ごとに直接インパルス(動力)を与え、もう一方は同期を維持するために追従するだけで、毎振動でテンプと直接かかわることはない。 一方、ナチュラル エスケープメントでは、両方のガンギ車が交互にテンプに直接インパルスを与える。つまりダイナパルス エスケープメントは、ブレゲの原理を踏まえつつ、ロレックスが独自に再構築した新たな脱進機構なのである。

ガンギ車にシリコンを採用した意義は、いくら強調してもしすぎることはない。 ロレックスのクロナジーシステムでは、レバーとガンギ車の両方がニッケル・リン合金製であり、これはオメガがコーアクシャル脱進機においてガンギ車やパレットフォークに使用している素材と同じである。 一方、ダイナパルス エスケープメントでは、ロレックスはガンギ車だけでなく、可動式のロック機構も含めて全面的にシリコンを採用している。 ロレックスが使用するシリコン素材は自己潤滑性、耐磁性、耐熱性、硬度、軽量性、そして耐衝撃性に優れており、まさに脱進機に理想的な特性をすべて備えているのだ。

ロレックス シロキシ・ヘアスプリング(2014年)

この素材はすでに2014年に登場したシロキシ・ヒゲゼンマイで知られており、もちろん今回のランドドゥエラーにも採用されている。シロキシはもともと、ロレックスの小径モデルから導入が始まり、近年では一部のデイトジャストやオイスターパーペチュアル、さらにヨットマスター37やパーペチュアル 1908などにも搭載されるようになってきた。いかにもロレックスらしい慎重な展開だが、2023年に発表された1908への採用は、ロレックスがシリコン素材に対してより積極的になってきた兆候であり、今回のランドドゥエラーにつながる布石だったとも言える。とはいえ、まったく新しい脱進機構が登場するとは、誰も予想していなかった。

2023年にパーペチュアル 1908に初めて搭載されたCal.7140は、本日発表されたランドドゥエラー以前のロレックスにおいて、もっとも高精度なムーブメントのひとつであり、比較対象として非常に有効な存在である。 1908のCal.7140とランドドゥエラーのCal.7135は、見た目の構造や仕上げこそ似ているが、この2年のあいだに技術的な飛躍があったことは明白だ。 Cal.7140は、まずCOSCによって未ケース状態で-4/+6秒/日の基準をクリアし、さらにロレックスの社内基準に基づいて完成品の状態で-2/+2秒/日を達成しており、高精度クロノメーター認定を受けている。ランドドゥエラーも同様に、この認定を受けている。 Cal.7140は、クロナジー エスケープメント、シロキシ・ヒゲゼンマイ、パラフレックス耐震装置という3つの最新技術を初めてすべて組み合わせたムーブメントである。 対するランドドゥエラーのCal.7135は、シロキシ、パラフレックスに加え、ロレックス初の自社開発による脱進機ダイナパルス エスケープメントを搭載している点で大きく異なる。 Cal.7140の振動数は4Hz(2万8800振動/時)だが、ランドドゥエラーはロレックス初となる機械式の高振動キャリバーであり、3万6000振動/時(5Hz)で動作する。 なぜ3万6000振動/時なのか? 理由なんて必要ない。やるべきことだからやった。それがロレックスなのだ。

ロレックス Cal.7140(パーペチュアル 1908/2023年)

ランドドゥエラーには、少なくとも32件の特許出願および特許が関連しており、そのうち18件は本モデル専用、さらにその16件がCal7135に起因するものである。 ダイナパルス エスケープメントの開発には、およそ10年の歳月が費やされてきた。 ロレックスは、この新たな脱進機構を軸としたCal.7100系のムーブメントを今後さらに展開していく意向を示しており、3万6000振動/時ムーブメントによる歩度の安定性が、信頼性や堅牢性の向上にもつながるとしている。

なぜ“オイスタークォーツ”ケースなのか?
ロレックスのカタログにおける一体型ブレスレットを備えたラグジュアリースポーツウォッチというカテゴリの空白を埋めるだけでなく、このケース形状が選ばれた背景には歴史的な文脈も存在する。かつてこのシルエットのケースには、最先端技術を搭載したロレックス最後のムーブメントが収められていた。そして今回もまた、ロレックスは同様に重要な役割を果たしているのである。

クォーツ技術が時計業界に大きな変革をもたらしたとき、スイスのブランド各社は協力してセンター・エレクトロニーク・オルロジェ社(CEH)を設立し、独自の対応策を開発することとなった。ロレックスも当然のように深く関与していた。その取り組みの成果として誕生したのがベータ21であり、このムーブメントを搭載した初のロレックスが、一体型ブレスレットを備えた同様のケース形状を持つモデル、Ref.5100 テキサノであった。

ロレックス テキサノ Ref.5100(1970年)

数十年後、シリコン技術が登場した際にも再びコンソーシアムが結成された。ロレックス、パテック フィリップ、そしてスウォッチ グループが、スイス電子・マイクロテクノロジーセンター(CSEM)と連携し、その可能性を追求したのである。 この協業によって生まれたのが、2014年に発表されたシロキシ・ヒゲゼンマイだ。ただし、ロレックスは1990年代からすでにシリコンの研究を進めていたという噂もある。 そして本日発表されたCal.7135は、クォーツ以来もっとも大きな時計技術の飛躍とさえ言えるかもしれない。そう考えると、テキサノやオイスタークォーツへのオマージュとしてこのケース形状を採用したのは、意図的なものだったと捉えるべきだろう。

さらに言えば、新しいランドドゥエラーは、ロレックスがこれまでに製造したなかで最も高精度な機械式モデルである。ここで重要なのは機械式という但し書きだ。というのも、ロレックス史上もっとも高精度なモデルという点では、いまだにオイスタークォーツがその座を守っているからだ。しかし、もしふたつの事例がパターンを示すものだとすれば、それはこういうことだ。ロレックスが精度と最先端技術を本気で追求するとき、採用するのはいつもこのケース形状なのである。

この革新的な時計は一体いくらで手に入るのだろうか?
ランドドゥエラー Ref.127334(スティールモデル)の小売価格は225万5000円だ。

参考までに、ランドドゥエラーの価格はスティール製のスカイドゥエラー(Ref.336934/244万2000円)よりわずかに下、GMTマスター(Ref.126710/166万4300円)よりは上に位置づけられており、多くのプロフェッショナルモデルよりも高価である。ランドドゥエラーは、ある意味でデイトジャスト41(124万4100円)に対するもうひとつの選択肢とも言える存在だが、新しい脱進機構、新設計のケース、フラットジュビリーブレスレットといった要素が加わることで、かなりのプレミアムが上乗せされている。これはロレックスにとって多くの“初”を刻むモデルであり、現代の時計製造に変革をもたらす可能性を持つ1本だ。その意味でも、ブランド随一の複雑機構モデルであるスカイドゥエラーに近い価格設定は決して不思議ではない。

意外性、しかしまさにロレックスらしい
ロレックスはほかのどのブランドにも劣らず秘密主義で知られているが、その歩みは常に“精度”“防水性”“自動巻き”という3つの中核原則に基づいている。なかでも最も重視されているのが精度だ。精度は、ロレックスにとって常に最優先される価値であり、事実1910年にはロレックスが世界で初めてクロノメーター認定を受けた腕時計を生み出している。今回のランドドゥエラーは、まさにその100年以上にわたる“卓越性の追求”の象徴といえる存在だ。そして搭載されたダイナパルス エスケープメントは、まさにゲームチェンジャーになり得る革新である。オメガはコーアクシャル脱進機を“250年ぶりに実用化された新たな機械式脱進機”と称しているが、ダイナパルスも同様の表現に値するだろう。シリコンパーツの積極的な活用と、明確に工業的量産を視野に入れた設計思想によって、ロレックスは新たな時計製造の時代を切り拓いたのかもしれない。

脱進機や時計技術の話題から少し視点を引いてみれば、今回のランドドゥエラーは、ロレックスのカタログにおいて非常に強力な選択肢となる1本であることがわかる。オイスタークォーツ風のケースに、新開発の一体型フラットリンクブレスレットを組み合わせたこのモデルは、ロレックスが掲げる第二の原則“防水性”をしっかりと満たしつつ、独自のビジュアルを持つデザインにも仕上がっている。見た目の面でも、ランドドゥエラーはデイトジャストのもうひとつの選択肢として機能しており、少し異なるケース形状を求めるユーザーに向けた提案となっている。また、デイトジャストよりも大幅に薄型であるため、ロレックスとしては異色の装着感を提供することになる。さらに言えば、この薄さ自体が時計技術における一種の“誇示”でもある。つまり、ロレックスはこう言っているのだ。「そう、我々はまったく新しい高精度脱進機を、自社初の高振動キャリバーで実現した。しかも、それを薄型でやってのけたんだ」

昨夜アクリヴィアの工房を訪れた際、噂されていたランドドゥエラーの話題が出るまでにかかった時間は、わずか10分だった。レジェップ・レジェピはこの新作について「非常に重要な時計だ」と語り、「ぜひ自分でも所有したい」とまで言った。

基本情報
ブランド: ロレックス(Rolex)
モデル名: ランドドゥエラー(Land-Dweller)
型番: 127234(36mm オイスタースチール&ホワイトゴールド)、127334(40mm オイスタースチール&ホワイトゴールド)、127235(36mm エバーローズゴールド)、127285TBR(36mm エバーローズゴールド、バゲットダイヤモンド セットベゼル)、127335(40mm エバーローズゴールド)、127385TBR(40mm エバーローズゴールド、バゲットダイヤモンド セットベゼル)、127236(36mm プラチナ)、127286TBR(36mm プラチナ、バゲットダイヤモンド セットベゼル)、127336(40mm プラチナ)、127386TBR(40mm プラチナ、バゲットダイヤモンド セットベゼル)