今回はミドルサイズのネオマティック(自動巻き)モデルを2本リリースした。

これまでで最も物議を醸したであろうノモスの時計、タンジェント 2デイト(72件ものコメントが寄せられた)が発表されてから数週間後、このグラスヒュッテのブランドは180度の方向転換をし、非常に保守的なふたつの時計、タンジェントとオリオン ネオマティック ドレをリリースした。

ノモスは予想どおりの反復的なスタイルに戻り、今回はミドルサイズのネオマティック(自動巻き)モデルを2本リリースした。今回は文字盤に、ほんのわずかに金のアクセントが加えられている。タンジェントは35mm径に厚さ6.9mmという、まさにバウハウスデザインの王道を征くドレスウォッチ然としたケースを持つ時計だ。ほかのタンジェント ネオマティックに共通するデザインとして、白く亜鉛メッキが施された文字盤、その周囲に5分ごとに刻まれたアラビア数字のミニッツトラックがあり、ノモスのロゴやスモールセコンドの目盛り、そして特徴的な時刻表示がブラックでプリントされている。ゴールドのアクセントは、時・分針、スモールセコンド、そして文字盤に印刷された“ネオマティック”という金色の文字で表現されている。

新しいタンジェント ネオマティック ドレ。

厚さ8.5mmの36.4mmケースを特徴とするオリオンには、さらにゴールドの要素が増えている。針や“ネオマティック”のゴールドに加えて、オリオン特有のダイヤモンドポリッシュ仕上げのアプライドインデックスもゴールドで仕上げられているのだ。今年の初めにノモスは、ゴールドのアクセントを加えたオリオン ネオマティック “ニュー ブラック”シリーズというきわめて印象的なモデルを生み出したが、今回はソフトホワイトのダイヤルがゴールドの輝きを少し和らげている。

新しいオリオン ネオマティック ドレ。

どちらのモデルも18mmのラグ幅、5気圧の防水性能を備えており、自社製の自動巻きムーブメントであるネオマティック Cal.DUW 3001を搭載している。このムーブメントは独自のノモススイングシステムを採用し、ブルースクリュー、グラスヒュッテ・ストライプ、そしてブランドの時計によく見られるペルラージュ装飾が施されている。なおパワーリザーブは約43時間だ。タンジェントはソリッドバック仕様のモデルで53万6800円から、裏蓋が1種類のオリオンは62万4800円(ともに税込)となっている。

我々の考え
今回のリリースはラインナップにさりげなく加わったものであり、タンジェント 2デイトのダブルデイト表示に驚いた多くの人々にとってはむしろ安心感を覚えるかもしれない。これらの時計が革新的かと言えばそうではない。しかし、タンジェント 2デイトやWatches & Wondersで披露された31色ものタンジェントのような、ここ1年のノモスの派手なリリースを経たうえで、長く支持されている定番モデルを好む層に向けた安定感のあるリリースと言えるだろう。

私は38mmのタンジェントを愛用しているが、初めて35mmのタンジェントを試したときに、これがオリジナルサイズである理由を思い出した。ラグが長くとも自分の細い手首には問題なく、タンジェントのケースは繊細でありながらシャープなケース形状に感じられる。36.4mmのオリオンも同じで、広々としたシンプルなダイヤルは小振りなケースシェイプでこそ映える。このサイズはまさに絶妙と言えるだろう。

どちらかひとつを選べと言われたら、間違いなくタンジェントを選ぶ。オリオンはゴールドとの組み合わせが素晴らしいデザインだと感じるが、タンジェントのほうがブラックの数字といったプリントの要素が多く、その分ゴールドのアクセントがダイヤル上でより際立っていると思う。あなたもそう思うだろうか?

以前から言っていることだが、ノモスはこの価格帯における薄型自社製ムーブメントのゴールドスタンダード(言葉遊びではない)を維持し続けている。むしろ薄型自社製を、略して“thin-house”とでも呼んでみてはどうだろうか。7mm未満の薄型自動巻きドレスウォッチをつくれるのであれば、ほかの競合ブランドももっと挑戦すべきだろう。

基本情報
ブランド: ノモス グラスヒュッテ(NOMOS Glashütte)
モデル名: タンジェント ネオマティック ドレ(Tangente neomatik doré)、オリオン ネオマティック ドレ(Orion neomatik doré)
型番: 192(タンジェント)、397(オリオン)

直径: 35mm(タンジェント)、36.4mm(オリオン)
厚さ: 6.9mm(タンジェント)、8.5mm(オリオン)
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: ホワイトシルバーメッキ
インデックス: プリント(タンジェント)、金メッキ(オリオン)
夜光: なし
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ホーウィン社製ブラウンシェルコードバンストラップ

orion wristshot
ムーブメント情報
キャリバー: DUW 3001
機能: 時・分表示、スモールセコンド
直径: 28.8mm
厚さ: 3.2mm
パワーリザーブ: 約43時間
巻き上げ方式: 自動巻き
石数: 37

ブランド10番目の“基本発明”にあたるナノ・フドロワイアントEWTを発表した。

この時計は圧巻の仕上がりだ。同ブランドの発明や功績を称えるインヴェンション ピースシリーズにはトゥールビヨンが頻繁に採用されており、この時計にも同機構の姿が見られる。ダブルトゥールビヨン 30°から始まった軌跡の集大成として登場したこのモデルは、驚くほど着用しやすいモノプッシャー式クロノグラフ(フライバック式で、同社初のクロノグラフとなる)に初のフライングトゥールビヨンを搭載しているが、注目すべき点はそれだけではない。

タンタル製ベゼルとスケルトンケースバックを備えた直径37.9mm×厚さ10.49mmのホワイトゴールド(WG)製ケースを使用したこのモデルには、2万1600振動/時で駆動するトゥールビヨンケージに基づき6分の1秒単位の表示を行う常時作動のフドロワイアント秒針(または“ライトニング秒針”とも呼ばれる)も搭載されている。この機構は垂直方向を保ちながら60秒で1周するトゥールビヨンに直結する。トゥールビヨンの振幅を直接伝えることで通常のフドロワイアント輪列の余計な部品を省き、ムーブメントの小型化(直径31mm)と部品数の削減(合計428パーツ)に成功している。

厚さはわずか10.49mmしかない。

もちろん限界もある。たとえばクロノグラフ作動時のパワーリザーブは、24時間しかない(クロノグラフ非作動時の総パワーリザーブは公表されていない)。そしてもうひとつ挙げると、この非常に高価な46万5000スイスフラン(日本円で約8200万円)のナノ・フドロワイアントEWTは冗談抜きで11本しか製造されないことだ。しかしすべてのモデルに、コレクターのあいだで長年定評があるグルーベル・フォルセイならではの手仕上げが施されている。

金額や入手困難な点を気にしないなら、このモデルは今年発売された時計のなかで私が手に入れたい時計のトップ3に入る。銀行強盗をして信じられない金額を手に入れたかのような興奮で汗をかきつつ、存在しない上限額のクレジットカードを差し出したくなる最初の時計になるかもしれない(いや、実際にこの時計を手に入れるために襲うべき場所は銀行ではないだろうが)。

値段のことはちょっと脇に置いておこう。ビンス・マクマホン(Vince McMahon)氏のネットミーム(アメリカのプロレス団体WWEのCEOであるビンス氏が、興奮や驚きを次第に強めていく様子を切り取った一連の画像。彼が徐々に驚き、最後には大興奮で椅子からのけぞるようなリアクションを見せる)を見たことはあるだろうか? 同僚にこの時計のことを説明した際、まさにそのミームのような反応をされた。大きさがたった37.9mm? それだけでも注目に値する。厚さがわずか10.49mmだって? 気に入った。モノプッシャークロノグラフ? なんとしても欲しい。さらにフライングトゥールビヨンと、トゥールビヨンケージに直接取り付けられたフドロワイアント秒針? もう何の話をしているのかわからない! これはまさに驚異的だ。

先に述べたとおり、サイズだけでもこの時計は特筆に値する。厚みはわずか10.49mmだが、ラグの位置や形状、長さのために手首につけると少し浮いたような感じがする。タンタル製の外周リングにサファイアクリスタルを備えたケースバックが背面に立体感を与え、さらにタンタル製ベゼルとドーム型風防もフォルムに奥行きを加えている。直径はややモダンな印象だが、手首で少し高く見える点はパテックのRef.5004(厚さ12.8mm)を彷彿とさせる。ただ、どちらも毎日つけていたいくらい素晴らしい。

ベン・クライマーにこの時計について話したところ、これは時計愛好家、特にグルーベル・フォルセイのターゲット層が10年以上前なら熱狂したであろう時計だと彼は言った。私見だが、ここ数年でグルーベル・フォルセイへの注目はやや薄れているように感じる。今取り上げているのは約54万ドル相当の時計なので、顧客数が非常に限られているのは事実だが、この価格帯の時計を買う人は意外といる。それでも過去2年間にわたり、高級時計コレクターの集会のために世界中を飛び回ってきたなかで、実際に手首にグルーベル・フォルセイをつけている人を目にしたのは2回だけだった。そしてそのどちらも、今月初めにシンガポールで開催されたIAMWATCHでの出来事だった。いったいこの会場で何が起こっていたのだろうか?

グルーベル・フォルセイはここ数年、購買者が各々のPRによって耳目を集める有名ブランドに流れていくなかでブランドとしてのアイデンティティを見失いかけていた。同ブランドは急速に製造数を拡大し、2021年の年間130本から翌年には2022年には260本に倍増した。また(短期間であったようだが)よりシンプルなモデルを投入してより広範な層への参入を試みたが、そうした製品でさえ驚くほど複雑な構造を持ち、価格は数千万円に達していた。さらにグルーベル・フォルセイには、異なるふたつのデザイン言語が存在する。

コンヴェクスラインはより現代的な購買者を引き付けるかもしれないが、リシャール・ミルと競合することになる。リシャール・ミルは(品質や時計製造技術は別として)同じ価格帯で同様のニーズを満たし、年間5600本以上の生産量により比較的入手しやすいブランドとなっている(とはいえ入手が容易なわけではないが)。しかしこの時計はまさに今のグルーベル・フォルセイに必要なものであり、そしてあらゆる面で圧倒的な存在感を放っている。

稲妻のようなスピードで動く針をぜひ見て欲しい。

グルーベル・フォルセイの“ナノメカニクス”や“ナノジュールス単位”でのエネルギー管理については、今回は深く触れないでおこう。その真偽を確かめるには情報が足りず、単なるマーケティング用語となっている可能性もあるからだ。理解を深めるには、スティーブン・フォルセイ(Stephen Forsey)氏にフォローアップで話を聞く価値があるかもしれない(実現するかどうかは今後わかるだろう)。

しかし2万1600振動/時のテンプによって直接駆動され、1秒を6分割して動くフドロワイアント秒針(私が好む複雑機構のひとつだ)という点だけでも、これは驚異的な成果だ。グルーベル・フォルセイによれば、従来のフドロワイアントは1回のジャンプで30μJ(マイクロジュール)を消費するが、ナノ・フドロワイアントは1回のジャンプで16nJ(ナノジュール)しか消費せず、圧倒的な効率化を実現しているという。

グルーベル・フォルセイらしいデザインで、クロノグラフのコラムホイールからフロスト加工、鏡面研磨、面取りに至るまで、ナノ・フドロワイアントEWTに搭載されたムーブメントの各パーツは完璧に仕上げられている。最初はブリッジの配置やサイズがクロノグラフに期待される歯車やレバーの存在感を損ねていると思ったが、時間が経つにつれてそのシンプルさが美しいことに気づいた。

おそらくこれはグルーベル・フォルセイがこれまでに手がけたなかで最も複雑なモデルだが、ファンを熱狂させるような時計はこれにとどまらず今後も登場し続けるだろう。この時計の値段は驚くべきものだが、今年見たなかで最もクールかつ印象的な時計であり、手に入れられるのは選ばれし11人だけだ。

グルーベル・フォルセイ ナノ・フドロワイアントEWT。直径37.9mm、厚さ10.49mmのWG製ケース、タンタル製のベゼルとケースバックリング。30m防水。ゴールド製の多層ダイヤル、ロジウムカラー、エングレービングが施されたブラックラッカー仕上げの時表示リングと分表示サークル、トゥールビヨンが覗く開口部、ゴールドのスモールセコンドとクロノグラフミニッツカウンター、ポリッシュ仕上げの面取り。フロスト仕上げのフドロワイアント、秒単位の目盛りとブラックラッカー仕上げ。時・分表示、ワンミニットフライングトゥールビヨンと連動するライトニング秒針、モノプッシャークロノグラフ。2万1600振動/時で動作する手巻きムーブメントのクロノグラフ作動時のパワーリザーブは24時間。動物素材不使用の手縫いストラップ。WG製ピンバックル、手彫りのGFロゴ入り。価格46万5000スイスフラン(記事掲載時約54万ドル/日本円で約8200万円)。限定11本。

2025年のもっとも入手困難な時計のひとつかもしれない。

ここ1、2年のあいだに “ザ・ウォッチインターネット ”に入り浸っている人なら、日本の時計ブランド、大塚ローテックの時計を目にしたことがあるだろう。Redditなどで6号や7.5号が5000〜7000ドル(日本円で約75万~105万円)、あるいは1万ドル(日本円で約150万円)で取引されているのを見たことがあるかもしれない。私の同僚でHODINKEE Japanの和田将治氏のような時計ジャーナリストが7.5号を着用していたり、WatchMissGMT(現在はWatchMissLotecのほうがふさわしい?)のようなインフルエンサーが6号を着用していたりするのを見たことがあるかもしれない。さて、2週間前にその大塚ローテック 6号がGPHGでチャレンジ賞を受賞した。というわけで、もしここまでの話題になじみがない方は、いまこそ情報に追いつくチャンスだ。

Ōtsuka Lōtec No.6
 日本での休暇中、友人でありHODINKEE Japanの同僚でもある和田将治氏と東京近郊まで足を運んだ。せっかく地球の裏側まで来たのに、普段会う機会のないブランドやその関係者たちを訪ねないのはもったいない気がしたからだ。先日Four+Oneで紹介した友人のジョン・永山氏もそのひとりだが、この日は独立時計師であり実業家でもある浅岡 肇氏の工房の向かいにある会議室を訪れた。

 浅岡氏の手ごろな価格のブランド“クロノトウキョウ”や新ブランド“タカノ”の時計は見ることができたが、彼の名を冠した時計を見るチャンスはなかった。その代わりにクルマおよび家電製品のデザインに携わってきた工業デザイナーで、時計への情熱をアパートからガレージ、果ては今年のGPHG チャレンジ賞で3000スイスフラン以下のベストウォッチ賞受賞へと昇華させた工業デザイナー、片山次朗氏に会う機会を得た。

Ōtsuka Lōtec No.6
Ōtsuka Lōtec No.6
 スカイラインGTRであれ数え切れないほどのクールなグランドセイコーであれ、日本における多くの素晴らしいモノと同様、大塚ローテックはJDM(日本国内市場)における時代の寵児である。いまのところ、このブランドの時計が入手できるのは日本国内だけで、主に抽選方式で販売されている。さらに配送は日本国内の住所に限られ、決済も日本の金融機関が発行したクレジットカードのみに限られる。このような制約があるため、二次市場での価格が高騰している。しかし片山氏と現在ブランドをサポートしている浅岡氏は、この状況を打開したいと考えているようだ。

Ōtsuka Lōtec No.6
 魅力的な価格帯と独創的な技術(この点についてはのちほど説明する)だけでなく、大塚ローテックの時計デザインは唯一無二である。いろいろな意味で実にツイていたのは、この記事のために6号機の最新型を手に取ることができたことに加え、まさにそのモデルがGPHGで賞を受賞することになったことだ。6号は、ヴァシュロンのメルカトルに搭載されているレトログラード表示(ただし上下逆さま)をほうふつとさせる、比較的珍しいが直感的で読みやすいレトログラード表示を備えており、個性あふれるモデルである。私たちの訪問中、同僚のマサはヴィアネイ・ハルター(Vianney Halter ) アンティコア(Antiqua)によく似た7.5号(下の写真)を着用していた。そして、このモデルが片山氏と最初に話すきっかけとなった。

No. 7.5
シンガポールで見た大塚ローテック 7.5号。

 ここで悲しいこと、そして悔しいことを認めなければならない。こんなことは初めてのことなのだが、iPhoneのボイスメモの録音を失敗してしまったのだ。というよりむしろ、録音したデータが洗いざらい壊れてしまったようだ。これからはバックアップとして予備のボイスレコーダー機を携行するつもりだが、私たちがともに過ごした1時間の会話から直接の引用は紹介できない。その代わり、片山氏の経歴をざっと紹介しよう。

 片山次朗氏は伝統的な時計師ではなく、マックス・ブッサー(Max Büsser)氏やファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニ(Fabrizio Buonamassa Stigliani)氏のような、デザインへの純粋な情熱によって時計の世界に辿り着いた偉大なデザイナーの流れを汲む。片山氏は長年、工業デザイナーとしてクルマや家電製品のデザインに携わってきた。自動車業界に身を置いていたが、2008年に自宅のアパートに収まるほど小さな(日本では並大抵のことではない)卓上旋盤を購入した。その限られた面積ではつくれるものも限られていたため、彼は時計に目を向け、この道を歩むことになった。

 片山氏によると、彼はしばらくのあいだ時計の世界とは無縁で、工業デザインのほかの分野からインスパイアされたケースデザインやモジュールに取り組んでいたという。そう、くだんのハルターの作品にも目を向けるようになったが、あの時計が革命的であったのと同様に、アンティコアのデザイン自体もどこからともなく生まれたものではないことを心に留めておく必要がある。私の目には、7.5号は時・分・秒を分離した3眼のヴィンテージ8ミリカメラをほうふつとさせる。一方、6号からはクルマのダッシュボードのメーターを瞬時に思い起こさせる。どちらも信じられないほど工業的だが、よく練られ、仕上げも見事だ。

Ōtsuka Lōtec No.6
 片山氏のデザインにはノスタルジーとセンチメンタルを覚えるが、同時に一定の実用性も確保されている。この時計は、余分なものをほとんどすべて取り除き(6号の日付は余分なものと言えるかもしれないが、私は煩わしいとは思わない)、繊細なサテン仕上げとダイヤル上の濃い型押しの表記に絞り込んでいる。必要な情報は(日本語ではあるが)すべて書かれている。ダイヤル上部には“6号 機械式”と“豊島 東京”、左側には“大塚ローテック製”、右側には“日常生活防水”と記されており、これは30mの防水性能を意味している。

Ōtsuka Lōtec No.6
 この時計はミヨタ製自動巻きムーブメント、Cal.9015を搭載しており、スケルトン仕様のケースバックをとおして眺めることができる。特筆すべき部分は少ないが、緩やかに傾斜したケースサイドが丸みを帯びたエッジへと細くなり、さらに傾斜した裏蓋のバンドにつながっているのが分かる。ラグはケースから突き出しており、非常に工業的な雰囲気で、何度でも言うがとてもチャーミングだ。ムーブメントは約40時間のパワーリザーブを備え、片山氏が設計したモジュールによって作動するレトログラード式時・分針を搭載している。このモジュールはダイヤルの下に隠れているが、公式ウェブサイトでその動作を見ることができる。また、中央下部にはスモールセコンド用のディスクと日付窓も確認できる。

Ōtsuka Lōtec No.6
 最初は6号に捉えどころのなさを感じていた。正直なところ、レトログラード針が私には少し繊細に見えたからだ(同じことが言えるかもしれない)。また無反射コーティングが施された完全にフラットなサファイア風防が、あらゆる角度でまるで存在しないかのごとく見えるのも驚きだった。写真でこの時計を見たときの私の反応のひとつは、風防がないのではという不信感だったと思う。“埃が混入したらどうするの? 雨が降ったらどうする? 針を引っ掛けて折ってしまいそうだ”と思った。だがそんな心配は杞憂に終わった。

Ōtsuka Lōtec No.6
 針の表示部分が盛り上がった様子はロイヤル オーク、ノーチラス、ウブロのどのデザインよりも舷窓を思わせる質感を持ち、現代においてスチームパンクの雰囲気を際立たせている。ハルターが数十年前に打ち出した聖火を受け継ぐブランドは多くないが、片山氏はその役割を見事に果たしている。

Ōtsuka Lōtec No.6
 おそらく時計全体で最も粗削りと思えるリューズに至るまで、彼はそれを完璧にやってのけ、しかもちゃんと機能している。リューズは指にやさしくなく、真に工業的な機械に見られるような質感のグリップを備えている。それでもサテン仕上げとポリッシュ仕上げのケース面とうまく調和し、ケースから突き出た様子はある種の気まぐれさを感じさせる。もしリューズが3時位置にあったならすべてが台無しになっただろうし、時計というよりもまるで蒸気船のボイラー室から引き出された機械を見ているような非日常感も台無しになっていただろう。

Ōtsuka Lōtec No.6
 6号(および7.5号も同様)は最近、素材が改良された。風防はミネラルガラスからサファイアクリスタルに変更され、より高品質なステンレススティールを使用する仕様となった。また初期の6号のメテオライトダイヤルは、今回のこのサテン仕上げのスティールダイヤルへと切り替わっている(全体のまとまりはよくなったが、ダウングレードという見方もある)。2023年末の時点では、片山氏は従業員3人で月産15本程度を生産していたが、新たに浅岡 肇氏が加わったことで、生産量は増加し始めるはずだ。これらの時計を初期に購入した顧客のなかには、信頼性やメンテナンス面に課題があったという事例を耳にしたことがあるが、ブランドが設備と生産能力を拡大し始めたことで、これらの諸問題も解消されつつあるようだ。

Ōtsuka Lōtec No.6
 316Lスティール製ケースのサイズは42.6mm×11.8mmで、数値上は少し大きく感じられる。しかしムーブメントサイズの制約という実用的な問題を超えて、このようなスチームパンク系のデザインには適しているといえよう。レトログラード表示用の隆起した部分が直径を狭めているため、横から見るとそれほど厚みは感じない。このケースデザインは、手首につけたときにより低い位置にあるように見せる効果を持つ。ブランドロゴが刻印されたピンバックルで固定されたカーフレザーストラップが付属するが、クッション部分が平行に2分割されているため、通常のカーフレザーよりもスポーティな印象を与えている。

Ōtsuka Lōtec No.6
 日本から帰国して以来、少なくとも5人の友人から大塚ローテックの“ツテ”を頼まれた。GPHG受賞以降は1週間に3人くらいが声をかけてくれた。ベン(・クライマー)はノーチラス熱狂時代、Ref.5711を希望小売価格で手に入れようとする人がどこからともなく現れたと話していたが、どうやら6号が私にとってのRef.5711のようだ。実際、そうであるに越したことはない。人々が再び既成概念にとらわれない考えを持つようになったことを物語っている。残念なことに、いろいろな制約があって私は手伝うことができない。できることなら自分用にも欲しいくらいだ。GPHG受賞はさておき、この新世代の手ごろなインディーズ(ファーラン・マリに当てはめるのをやめたのと同様、片山氏のような人にマイクロブランドという言葉は使いたくない)は、時計コミュニティに新たな風を呼び込んでいると思う。

ヴァン クリーフ&アーペルのカデナについて語るべきなのか。

女性用の時計といえば、カルティエやロレックス、そして少し範囲を広げると、オーデマ ピゲが主役として注目されることが多い。ただこうした“伝統的”なラグジュアリーウォッチの世界の奥には、個人的にはジュエリーに近いけれど、それだけじゃない時計と呼びたいカテゴリーがある。これらの時計はデザイン重視で、宝石が散りばめられていたり装飾にしっかりとした意図が込められていたりするものだ。そんな時計たちが、ほかでは少し退屈に感じられる市場に一筋の希望を与えてくれる。

このジャンルで最も代表的なのは、間違いなくブルガリのセルペンティだ。これは異論の余地なし。もう(大好きで仕方がないので)何時間も(そして何本もの記事を)費やしてセルペンティについて語り尽くしてきた。あの妖艶な曲線やセクシーなフィット感に完全に魅了されてしまい、ジュエリーに近いけれどそれだけじゃないほかの素晴らしい時計たちのことをつい忘れてしまうくらいだ。でも、カルティエスーパーコピーn級品 代引き華やかな人々のための価値観を変えるようなハイジュエリーウォッチには、セルペンティだけでなくもっと多彩で多様な選択肢があってもいいはずだ。

数カ月前に話を戻そう。

「カデナについて話さなきゃ!」と、ジュエリーの専門家であり『タウンアンドカントリー』の寄稿編集者でもあるウィル・カーン(Will Kahn)氏が、ギリシャの山道を走るガタガタ揺れる車内で叫んだ。「あれは象徴的で美しいのに、どうしてもっと注目されないんだ?」 その言葉に私も同感し、興奮気味に同じような気持ちを彼にぶつけた。そしてニューヨークに戻ったらもっと話をしようと約束した。そのあと、私は自分の考えを整理し始めた。

ヴァン クリーフ&アーペルのカデナは本当に美しい時計だ。特に私が好きなのは、ダイヤモンドなしのシンプルなイエローゴールドモデル。ケースのデザインは直線的で洗練されていて、斜めに配置された文字盤は、さりげなく時間を確認できる工夫がされている。現行モデルは26mm×14mm、ヴィンテージモデルは25mm×17mmとサイズに少し違いがあるが、どちらもダブルスネークチェーンのブレスレットが特徴的で、南京錠のような丸みのある留め具がしっかりと存在感を放っている。しなやかかつセクシーで、この時計はエレガントな女性の装いにぴったりの1本だ。

トルーマン・カポーティ(Truman Capote)と彼の白鳥たちを思い浮かべてほしい。カデナは端正で上品だが、どこか自然体な雰囲気がある。もし歴史的なスタイルアイコンと時計を一致させるなら、カデナはジャッキー・オナシス(Jackie Onassis)そのものだろう。彼女の洗練されたクールさにぴったりだ。華やかで自由奔放なスタイルのビアンカ・ジャガー(Bianca Jagger)氏はセルペンティがぴったりだろう。どちらの時計も、おしゃれが好きな女性のためにあるというのがこの話のポイントだ。

カデナは1935年に初めて登場し、2015年にコレクションとして復活した。今回のリバイバルでは、視認性を高めるために文字盤が大きくなり、ムーブメントもクォーツに変更されている。しかし再登場から10年経った今でも、カデナはまだあまり知られていない存在だ。「セルペンティやタンクみたいに、長いあいだ我々の記憶に刻まれてきた象徴的な時計とは違って、カデナはどこか控えめで目立たない存在だ」とカーン氏は話す。それでも、カデナも女性のための優れたデザインのひとつとして確かな価値を持っているのは間違いない。セルペンティと比べるともっと幾何学的なデザインだが、そのぶん清潔感がありながらもセクシーさを漂わせている。セルペンティがしっかりと手首に絡みつく感覚を持っているとしたら、カデナはどこか余裕のある、誘惑的で緩やかなドレープのような時計だと言えるだろう。

カデナは間違いなく、歴史に残る名作の仲間入りをするべき時計だ。スポーツウォッチにありがちなピンクの文字盤や、ベゼルに散りばめられたダイヤモンドのような、どこか使い古された無難なパターンから抜け出す新鮮な存在である。ただ、腕時計には男女問わず理想的な形という固定観念があるのも事実。この少しニッチな斜めのデザインは、そのイメージからちょっと離れすぎているのかもしれない。セルペンティもデザイン性は強いけれど、それでも文字盤はしっかり上を向いている。

もしかすると、カデナはジュエリー好きのための時計なのかもしれない。サザビーズ・ジュエリーアメリカ部門の副会長であるフランク・エヴァレット(Frank Everett)氏も同じ考えのようだ。電話で彼は「私はカデナにちょっと夢中なんです」と語り、「その時代にはとてもモダンだったものが、今振り返るとレトロや時代を象徴するものに見えるんです。本当に興味深いですよね」と話していた。私もその意見に賛成だ。カデナを知らなければ、デザイン重視のウォッチメイキングが輝いていた時代に生まれたものだと思ってしまうだろう。その雰囲気は1930年代というより、むしろ1970年代に近い。カルティエのクーリッサンよりも、最近のAP リマスター02に共通するものを感じる。カデナはアール・デコ調のレディスウォッチだが、素材の重厚感が際立っていて、当時主流だった繊細で華奢なカクテルウォッチとは一線を画している。当時としては非常に前衛的なデザインだった。「1920~30年代に、女性がドライビングウォッチをつけてクルマを運転していたなんて、考えただけでもワクワクしますよね。あのタマラ・ド・レンピッカ(Tamara de Lempicka)がブガッティを運転している有名なセルフポートレートを思い出します。彼女こそカデナをつけているのがふさわしい女性だったと思います。型破りで、自立したそんな女性がこの時計を選んだに違いありません」

それからレザーストラップのカデナもある。ゴールドとレザーのコントラストが生む雰囲気はどこか力強くて、クールさが際立つ。まるで1985年のアンジェリカ・ヒューストン(Angelica Houston)が、白いタンクトップにジョッパーズ、黒のライディングブーツを合わせて煙草を吸っている姿を思い起こさせるようなスタイルだ。南京錠とレザーの組み合わせにはエルメスらしい雰囲気もあって、ヴィンテージ感がありつつも、ただのレトロに終わらないのが魅力だ。正直こういう表現はありきたりかもしれないが、カデナは本当にシックなのだ。

『ワシントン・ポスト』のファッション批評家、レイチェル・タシジャン(Rachel Tashjian)氏はこう言っている。「今の時代、シックという言葉は簡単でブルジョワ的なものを指して使われるが、本来のシックはアンチブルジョワだった」。このファッションの価値観の逆転という考えが、頭から離れなかった。2024年、私たちは個人のスタイルという捉えどころのない概念に夢中になり、ザ・ロウやロロ・ピアーナ、そしてエルメスに浸っていた。どれもあえて言うなら、伝統的な憧れや高価さを象徴するものばかり。それがシックだと言われても…正直、なんだか退屈ではないだろうか。

もしかしたら、2025年には壮大で大胆でちょっと危険なアイデアが、ロロ・ピアーナのベージュ一色に支配された今の価値観を覆そうとしているのかもしれない。たとえばカルティエがずらりと並ぶなかにカデナのような時計が現れて、よりエネルギッシュで先進的、そして表現力豊かな世界のシックを象徴する存在になれるんじゃないかと思う。とはいえ、現実的に考えるとどの時計ブランドも美しさやスタイル、自己表現に対する私たちの考え方を根本的に変えるのは難しいのかもしれない。創造性が本当に輝くのは人を遠ざけるものではなく、喜びを与えるものとして存在するときだ、と以前どこかで読んだことがある。結局のところ、私にとってジュエリーや時計を求める理由の多くはただシンプルに、装いに新しいダイナミズムを加えるという美的な楽しさにある。

「ベニュワールのバングルを誰もが口にして、どの店舗でも売り切れのような状況なら、カデナだって同じくらい注目されるべきだと思う」カーン氏はそう語る。カデナはその個性的なデザインゆえに、多くの人に愛され模倣されているベニュワールと同じ立ち位置に立つのは少し難しいかもしれない。ただしヴァン クリーフ&アーペルのウォッチ部門が、広く支持を得るきっかけになる可能性は十分あると彼は考えている。「ヴァン クリーフは、きわめて限定的で超複雑な時計では大きな成功を収めている。でもそれらは特定の顧客向けのものだ。カデナにはもっと広い層にアピールできる可能性がある。これは本当にグローバルヒットになれるポテンシャルを持った時計だと思いますよ」と彼は言う。

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